第23話 野有死麕(野で死んだ鹿を拾った)

野で死んだ鹿を拾った

白い茅で包もう

春を思う貴女に

この僕が贈り物をするからね!


林にくぬぎが生えている

この鹿の肉を

白い茅で包もう

しら玉のような貴女のために!


葦垣あしかきすえかきけて君越ゆと人にな告げそことはたな知れ



野有死麕 白茅包之

有女懷春 吉士誘之


林有樸樕 野有死鹿

白茅純束 有女如玉


舒而脫脫兮 無感我帨兮 無使尨也吠


【ひとこと】

 和歌の素養が欲しいぃぃぃ。男の歌は残念に、女の歌は巧緻でピシャッてお断りする和歌に詠めるようになりたい。和歌が詠めなかったので借りてきた泣。

 この詩は「なんか知らんけど(狩で?)死んだ鹿見つけた、ヤッター!これ包んでご祝儀にしよう」な男に対して女①それでもいいよ、②絶対にない、の解釈でわれてる様子? そんなの絶対に②だよ。何故ならその方が面白いから。

 前半二連は素朴な感じの四文字なのに三連だけ「兮」入って五文字なのなんで? なんで変えた? 絶対嫌がらせでしょ。嫌がらせです。何故ならその方が(略)

 陶淵明の頃ならいざ知らず詩経の頃ってみんな普通に「兮」入れて読む気はするよね。項羽も劉邦も「兮」入れて読むし。他の例は知らない。でも前半と後半で口調帰るんだからそういうことじゃないの? お国言葉で返すとか古語で返すとか、とにかく同じ言葉を喋りたくないんでしょ? 絶対そうだね。何故なら(略)

 さて万葉集3278に「犬な吠えそね」(犬よ吠えかかってはいけないよ)のフレーズがある。3278は長歌で前半が男性、後半(高山のから)が女性で〆が「犬な吠えそね」。もうこの被り方だけで面白くない!? 上記の歌は万葉集3279より反歌。「垣根の上のかき分けてあなたが来るなどと人に言いふらしてはいけない。私の言うことをよく聞き、よくわきまえよ」の意味。なんだこの完璧さは……! うっ(ハートを撃ち抜かれる絵文字)フゥ……。という訳で前半は浮かれきった現代語に訳した。「意味が分からんなら話しかけるな、意味が分かっても話しかけるな」のイケズがしたかったが、この女ただのツンデレですね。めっちゃ待ってるじゃん。自分で和歌が読めないとこういう時に困る。


3278

赤駒を 厩に立て 黒駒を 厩に立てて それを飼ひ 我が行くごとく 思ひ妻 心に乗りて 高山の 嶺のたをりに 射目立てて 鹿猪しし待つごとく 床敷きて 我が待つ君を 犬な吠えそね

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