第21話 小星(なまえ しらない ほしがある)

※「夕焼け 小焼けで 日が暮れて」のリズムで


ゆうやけ こやけで ひがくれて

ひがし いつつの ほしがある

おそばに よるよ きぬぎぬは

からすが なくまえ かえりましょう


からすき すばるは いえるけど

なまえ しらない ほしがある

ふとんを かかえ ゆくよるの

そらには きらきら きんのほし


嘒彼小星 三五在東

肅肅宵征 夙夜在公 寔命不同


嘒彼小星 維參與昴

肅肅宵征 抱衾與裯 寔命不猶


【ひとこと】

 夫人と妾では立場に違いがあり、扱いがまるで違う。この歌とは関係ない後の時代だけど帝の夜伽を一人でできるのは「妃」の位の所有者だったらしい。それ以下は2P以上だったってこと? ターン制で交代したってこと? その両方ってこと? うーん、権力者の考えることってすごいね。詩経の頃ってこの辺どうだったんだろう……? 虞美人の「美人」は位の名称としていいのか微妙だし西施なんてそれすら分からないけど、まぁ好きにやってたんでしょうね。

◯いつつのほし かすかなるの小さき星/三つ五つと東に在り。普通に東空に明るい星がで始めたという景色の描写。でも妾が一人だけってこともなさそうですよね。なんなら妃とか夫人が複数いてもおかしくないねと思った。暗喩。

◯おそばによるよ 夜なのでお側に寄りますよ

◯きぬぎぬ 後朝。元の詩が肅肅しゅくしゅくなど音を重ねてきているので持ってきた。からすだけで暁烏とピンとくるなら「しずしずと」として夜の話を深掘りしてもよい。

◯からすがなくまえかえりましょう 暁烏が鳴く前の未明には後朝の別れを済ますの意。ここでは男が去るのではなく妾が自室に帰る。元の歌詞の子供は夕焼けの中カラスといっしょに連れ立って帰るが、対照的にこの妾は朝焼けてもない暗い空をひとり帰るのだろう。

◯からすき しん参宿しんしゅく。オリオン座の三つ星、転じてオリオン座のこと。オリオン座は冬の星座。空が見えるのだから妾は外廊下を歩いているのだろう。切ない。

◯すばる りゅう。牡牛座の星。プレアデス星団。なお「すばる」は枕草子にも出てくる古くからある日本語。

◯なまえしらないほし 「かすかなるの小さき星。れ參と昴」つまり妾が星で奥様はもっと上格(つまり月?)って元の詩には言われたけど、無視して小星の掘り下げ。からすき、すばるが夫人様で妾が小さき星。夫人も妾も一人だけってことなさそうだし。暗喩。

◯ゆくよるの 「肅肅しゅくしゅくとしてよるき」宵は夜と同義で「宵の口」のことではない。征は行くこと、あるくこと。ご主人様の部屋に行くのかお勤めを終えて自分の部屋に行くのか。夙夜しゅくやはきわめて早い朝ときわめて遅い夜なので、どちらともとれる。

◯そらにはきらきらきんのほし 「まことめいの同じからざるなり」「まことめいひとしからざるなり」を私が訳すとこうなる。

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