第20話 摽有梅(うめのみ)

※「赤い靴はいてた女の子」のリズムで


梅の実が成っているあと七つ

吉日を選んでくだしゃんせ


梅の実が成っているあと三つ

今すぐに選んでくだしゃんせ


梅の実が落ちている落ちている

お前さま拾ってくだしゃんせ


【元の詩】

摽有梅、其實七兮。

求我庶士、迨其吉兮。


摽有梅、其實三兮。

求我庶士、迨其今兮。


摽有梅、頃筐塈之。

求我庶士、迨其謂之。


【ひとこと】

「摽有梅 其實七兮」は「ちて梅有り 七つ」(兮は置き字)らしいので、「梅の実が落ちている(枝には)あと七つ」の方が原詩に近い。

 行き遅れたくないの呪いのすごい。時代や……。江戸時代には数え20で年増だったらしいけど、詩経の頃は何歳くらいなんでしょうね?

◯くだしゃんせ 「しゃんせ」は助動詞「しゃんす」の命令形。「しゃんす」は主に江戸時代、上方を中心に遊里の女性が使った言葉らしい。遊女に限定せずに済むならそうしたかったが「おくれませ」では堅すぎるので「しゃんせ」とした。かえって雰囲気が出ていいかもしれないと思い直しているところ。ただこの場合、落ちた実がより切ない。

◯選んで、拾って 1番で選ぶのは吉日、2番で選ぶのは私、3番は選ぶも選ばないもなく私を拾って欲しいの流れ。見上げてもぐ実から落ちて拾われる実になる恐怖。そうでなくても花の色の移り変わりはかなしいのに。わが身世にふるながめせしまに。


2023/3/21追記

ちて梅有り」は今では誤りなのですね!?「王風:木瓜」と同じく女性が男性に向かって木の実を投げて求婚する儀式(?まつり?)のことなのだとか。


渡部 英喜/著『漢詩花ごよみ 百花譜で綴る名詩鑑賞』亜紀書房、2017年


http://yamatouta.asablo.jp/blog/2010/06/06/5141081

2023/3/23閲覧


↓新釈漢文大系さん読み直して「もしもしかめよ」で作ってきた。ミックスするのは違うだろうという「正しさ」については横に置き「正しさより私に刺さるかどうか!」といういつもの方針で「吉兮」はいい人を選ぶ、「今兮」はタイミングとして今を選ぶということにした。ついでに「いま」「いい」を1〜3に詠み込んでおいた。


もしもし あなた そう あなた

いまから なげるわ うけとって

籠にゃ ななつの 梅がある

いいひと えらんで およめさん


もしもし あなた そう あなた

梅の実 なげるわ うけとって

籠にゃ みっつも あるけれど

いまでも いいのよ プロポーズ


もしもし あなた そう あなた

どうよ わたしは いいおんな

このさい 籠でも いいでしょう?

いまから 挙式は いかがです?

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