第3章

とある収容所


ヴィルガ「!?」

「ここは…」

「確か…俺はオブザレヴを倒して…」


無線がなる


ヘレン「大丈夫?!ヴィルガ!」


ヴィルガ(ああ、なんとかな)

(少し頭が痛むだけだ…)


ヘレン「今あなたの状態を見てるけど、とても酷い状態だわ…」

「身体には問題ないんだけれど精神への負荷が凄いの」


ヴィルガ(大丈夫だ。それぐらいなんとでもなる)


ヘレン「ヴィルガ!あなたのためを思って言っているのよ!!」

「なるべくあのIRを使うのはやめなさい」

「いいわね?」


ヴィルガ「わかった…」


ヘレン「素直でよろしい」


無線が切れる


扉が開く音がした。ヴィルガは音の方に顔を向けた。すると目の前に今回のターゲットが現れた。


???「ようやく目が覚めたか『HEXの落ちこぼれ(Faileder)』よ」


ヴィルガ「!?その声は!」

「デイビッド!!」


デイビッド「ハッハッハッハッハッ!!」

「久しぶりだなジャック。3年ぶりの再会だぁ...」

「元気にしてたか?」


ヴィルガ「・・・」[睨む]


デイビッド「今はそんなことどうでもいいか」

「俺が聞きたいのは……」

「どうやってここの場所を掴んだ?」

「誰の命令でここへ来た?」

「国か?それともーー」


ヴィルガ「!?」

「あの人は関係ない!!」


デイビッド「そうかそうか」

「じゃあ…目的はなんだ?何しにここへ来た?」

「俺の暗殺か?もしくは核兵器の破壊か?」


ヴィルガ「・・・」


デイビッド「正解は…そのどちらも…だろ?」


ヴィルガ「・・・!」


デイビッド「ふん…そこで大人しくしているといい」

「もうじきあれが完成するんだ」

「我々人類の『始祖の知恵(Wisdom Found)』…ウィスダムファウンドがな!」


ヴィルガ「ウィスダム…ファウンド?」


デイビッド「ああ、今開発している核兵器さ」


ヴィルガ「なにっ!?」


デイビッド「ジャック?お前は大人しくウィスダムファウンドの審判が下るのを待てばいいんだよ」


ヴィルガ「…っ!黙れっ!」

「大体お前は神にでもなったつもりか!!」


デイビッド「"神にでも"?違うな」

「私こそが神なんだよ。ジャック」

「知ってるだろ?俺のミドルネームを?」

「俺のミドルネームはAだ」

「"神に最も近い存在"なんだ」

「分かるか?その意味が」

煽り立てように言うデイビッド。


ヴィルガ「・・・」[睨む]


デイビッド「私は気づいたんだ」

「今の世界は古臭く(old)全く刺激的ではない事に。退屈だったんだ…」

「なら私が…私が『未来の世界(WoF)』を作れば良いと思ったんだ!」

「どうだ?良い考えだろう?!」


ヴィルガ「そんな物作ったって世界は変わらない!!」

「俺達がそうだったように世界は簡単には変わらないんだ!」

「均衡を保とうとするんだ」

「何故!何故お前がーー」


デイビッド「俺がどうしたと言うんだ?」

「これは俺だけの問題ではない。ジャックお前の問題でもあるんだよ」

「どうして自分は関係ないと思った?」

「覚えているだろう?3年前お前達がいう『平和なき負の遺産』のことを!」

「政府を脅かすテロリスト集団を一掃するために俺達2人が派遣された」

「だかな、おかしいと思わなかったか?」

「何故、俺とお前だけだったのか…」

「そして…俺は知った」

「俺達HEXが作られた本当の理由。そして目的をな」

「これは最初から仕組まれた"計画"だったとな」

「だからあの日俺は反乱を起こした」


ヴィルガ「それだけの為にか!?」


デイビッド「ああ、そうだ!」

「お前は知らないから何とでも言えるんだ!」

「この苦しみがな!!」


扉が開く


ポルソ「失礼します。テスタ・コルポ様」


デイビッド「?どうしたんだオッキオ」


ポルソ「ディート・スパッラから伝言を承りました」

「エア・"ローレンス"が逃亡しました」


ヴィルガ(エア・ローレンス…?"ローレンス"!)

(スウィットが言っていた姉か!)


デイビッド「なに!?あの女…」

「おい!そこの警備員あいつをしっかり見張っておけ!」


警備員「は!はいっ!」


デイビッド「行くぞオッキオ」


ポルソ「はっ!」


扉が閉まる


ヴィルガ(なぜスウィットの姉が逃亡したんだ?)

(確か隔離されているんじゃなかったのか?)



???「ヴィルガ聞こえる?」[小声]


ヴィルガ「?その声は」[小声]


スウィット「僕だよスウィットだよ」[小声]


ヴィルガ「スウィット!どうしてここに?」[小声]


スウィット「君を助けに来たんだ」[小声]


ヴィルガ「?ここには警備兵が居たはず」[小声]


スウィット「はは。これだよ」[小声]


ブォン[効果音]


ヴィルガ「あの兵士はホログラムだったのか!?」[小声]


スウィット「ふふ。凄いだろ!」[小声]


ヴィルガ「ふっ。全くだ」[小声]


スウィット「・・・」


ヴィルガ「おい?どうしたんだ?」[小声]


スウィット「いや、初めてヴィルガが笑ったなって」[小声]


ヴィルガ「俺をなんだと思ってるんだ」[小声]

「俺だってお前と同じ人間だぞ?」[小声]

「面白い時に笑わないと損した気分になるからな」[小声]


スウィット「ふふ」


ヴィルガ「ふん」


ヴィルガ・スウィット「「あははははは」」

ヴィルガ「しかし、どうして俺がここに居ると分かったんだ?」


スウィット「それは、君が収容所に運ばれるのを見たんだ」

「カメラをハッキングしてね」


ヴィルガ「なるほど。君はハッキングも出来るのか」


スウィット「まあね。僕にかかればハッキングなんて朝飯前だよ」

「あと君を助けるのともう一個用があって来たんだ」

「君のIRを改良してハッキング能力とホログラムの機能を付与させておいたよ。」

「これでカメラをハッキングしたり自由にホログラムを出せるようにしといた」

「あとは脳への負担をかけないようにもね」


ヴィルガ「それは助かるな」


スウィット「良いよ。これも姉さんのためだからね」


ヴィルガ「そうだ!スウィット。お前の姉が逃亡したと聞いたんだが。大丈夫なのか?」


スウィット「大丈夫じゃないよ…」

「でも、その事についても伝えに来たんだ」

「僕の方でも色々と立て込んでいて」

「今姉さんのとこには行けないんだ」

「そこでヴィルガ。僕の代わりに姉さんと会ってくれないかな?」


ヴィルガ「ああ、それはいいんだが…」

「場所が分からない以上会うのに時間がかかるぞ」


スウィット「そこは、大丈夫だよ」

「姉さんはきっとあの場所にいる…」[小声]

「姉さんの居場所のデータを送っておくね」


ヴィルガ「?…助かる」


スウィット「そうだ。姉さんと会う時の合言葉を教えるよ」


ヴィルガ「合言葉?」


スウィット「そう合言葉」

「姉さんは疑心暗鬼だからね」

「これを言えば信用してくれるはず」

「合言葉は『私達には明日(未来)がある』」

「もし、姉さんに合言葉を聞かれたらさっき言った言葉を言って」


ヴィルガ「分かった」

「それとスウィット一つ聞いてもいいか?」


スウィット「いいよ」


ヴィルガ「ウィスダムファウンドについてなんだが」


スウィット「ウィスダムファウンドを知っているのかい?!」


ヴィルガ「ああ」

「さっきテスタ・コルポからな」

「ウィスダムファウンドというのはどういう兵器なんだ?」


スウィット「ウィスダムファウンドは正確に言うと兵器じゃないんだ」

「ウィスダムファウンドってのは『始祖の知恵』というチップに入ってるデータのことさ」

「多分だけどテスタ・コルポが言っていたのはWoF。ウォフのことだよ」

「ヴィルガが止めようとしている核兵器の名前さ」


ヴィルガ「なるほど...」

「じゃあ、そのWoFってのはなんだ?」


スウィット「二足歩行型核兵器さ」

「簡単に言うと映画やアニメみたいなロボットだ」

「しかも、それには最新型の核燃料を搭載していて起動すれば3ヶ月は稼動しているんだ」

「背中には弾道ミサイルが搭載されている」

「8000kmから離れた場所からでも正確に目標地点に落とせるんだ」


ヴィルガ「8000kmだと!?」

「ここからアメリカまで届くぞ!」

「奴らの狙いはアメリカなのか?!」


スウィット「それはまだ分からない。でも可能性としては充分にありえる話だ」


ヴィルガ「クソッ!」


スウィット「ヴィルガ。WoFの性能はそれだけじゃないんだ。話を続けるよ」


ヴィルガ「ああ...」


スウィット「移動型核兵器って言ったの覚えてる?」

「その名の通り移動するんだ」

「水陸をね」

「速度はあまり速くは無いけど」

「その分装甲が頑丈なんだ」


ヴィルガ「なるほどな」

「移動型兵器としては充分過ぎるな」


スウィット「そうだね」

「WoFは移動に長け、国一つ落とす力を保有している」

「おまけに重機関銃やどんな装甲でも溶かしてしまうレーザーなんかもね」

「カメラも最新鋭のものが施されていて」

「ちょっとした動き・熱・明るさに反応するんだ」


ヴィルガ「かなり戦闘向けにも作られているんだな」


スウィット「大丈夫だよヴィルガ」

「別に勝ち目がない訳じゃない」

「なぜなら、姉さんがその鍵を握っているからね」


ヴィルガ「!?それは本当なのか?」


スウィット「うん」

「だからヴィルガ」

「一刻も早く姉さんと会って欲しいんだ」


ヴィルガ「そうだな」

「引き止めてすまない」

「それじゃ行ってくる」


スウィット「うん、幸運を祈るよ」


収容所


とある湖


ヴィルガ(ここかスウィットに送られた場所は)


パキッ![小枝を踏む音]


ヴィルガ(しまった!?)


???「誰!?」


ヴィルガ「!?」[構える]


エア「あなた!テスタ・コルポの…」

「いや…違うわね。ごめんなさい」


ヴィルガ「分かるのか?」


エア「分かるわよ。ずっとあの場所(研究所)に居るんだから」


ヴィルガ「すまない…」


エア「大丈夫よ」

「ところであなたは何者なの?」

「こんな所にいるってことはただの一般人じゃないんでしょ?」


ヴィルガ「そうだな」

「俺はあんたの弟に頼まれてここに来たんだ」


エア「!?あの子に?」

「でも、怪しいわね」

「合言葉は?」


ヴィルガ「合言葉は…私達には明日(未来)がある」


エア「…そ。本当にシャハトの仲間なのね」


ヴィルガ「俺はエア・ローレンスあんたを助けに来た」


エア「!?あなたが私を助けに来た人だったの?!」


ヴィルガ「聞いてないのか?」


エア「詳しくはね。ただ「ここから抜け出せるよ」としか聞けなかったから」

「そうなのね…良かった…」

「ねぇ、私からも1ついいかしら?」


ヴィルガ「何だ?」


エア「依頼よ」


ヴィルガ「依頼?」


エア「そう、依頼」

「依頼内容は…」

「今テスタ・コルポが開発している核兵器」

「ウィスダムファウンド…WoF(ウォフ)の破壊よ」


ヴィルガ「いいだろう」


エア「やけにすんなり受けてくれるのね」


ヴィルガ「まあな」

「しかし、何故俺に頼むんだ?」

「自分達でも破壊は出来たはずだ」


エア「それは...」

「私達姉弟が核兵器を造らされているからよ」

「テスタ・コルポによってね」

「もしバレてしまったら私達は殺されてしまうわ」


ヴィルガ「そうなのか」


エア「ええ、そうよ」


ヴィルガ「じゃあ何故ここにいるんだ?」


エア「テスタ・コルポに騙されたの」


ヴィルガ「何だって?」


エア「騙されたの。テスタ・コルポにね」

エア「最初は「世界を良くするために手を貸して欲しい」とテスタ・コルポからお願いされたの」

「その時私は何も疑わずそれを承諾してしまった」

「けど…シャハトだけはずっとテスタ・コルポに対して疑いの目で見ていたの」

「それなのに…私は…」

「弟の…シャハトの言うことも聞かず…」

「でも!私の…私達の力(知恵)で世界が良くなるって思ったら是が非でも協力したいってなってたの」

「けれど、それも時間の問題だったわ」

「いつしか私達は異変に気づいた」

「世界を良くするなんて全くの嘘だった。本当は世界を脅かす兵器を造らされていたんだ…ってね」

「ほんと馬鹿よね。天才科学者が聞いて呆れるわ」

「それに…自分の弟を信じてあげられなかった」

「弟よりも自分の…私利私欲のために…」

ヴィルガ「そんなに自分を責める必要は無い」

「大事なのはそこからどう自分が乗り越えられるかだ」

「俺達人間っていうのは臆病で儚い生き物だ。しかし、君は…君達は世界を良くしたいと思い願っての行動だったんだろ?」

「自分自身が思った"正しい道"をそのまま歩み続ければいい」

「どんな明日(未来)にも希望はあるんだ」

「悪いのは君達姉弟じゃない。騙したあいつ(テスタ・コルポ)だ」

「そんな物(核兵器)俺が全て壊してやる」

「不安がる事は無い」

「必ず君達姉弟をあいつ(デイビット)の手から救い出してやる」



エア「そうよ…ね。ありがと」

「少し気持ちが晴れたわ」


ヴィルガ「そうか」


エア「少し時間をちょうだい」

「気持ちを落ち着かせたいわ」



エア「はぁ…良いわよ」


ヴィルガ「もう大丈夫なのか?」


エア「ええ、いいわよ」

「早速本題に入るわね」

「核兵器の事なんだけどーー」


???「おい!!」

「よぉーやく見つけたぞ!!」


エア「まずい。マノ・ガンバよ」

「1番めんどくさいやつが来た」

「早くここから離れましょう」


ヴィルガ「あ、ああ」


マノ「おい!?待った待った」

「俺はそこにいる女には興味は無い」


エア「?じゃあ何しにここへ?」


マノ「俺はアイツと闘いにきたんだ」

ヴィルガの方へ顔を向ける。


ヴィルガ「なに?」


マノ「俺はな強い奴と闘いてぇだけだ」

「ボスの話によるとお前…」

「戦闘技術はボス(テスタ・コルポ)と並ぶぐらい強ぇんだろ?」


ヴィルガ「それがどうした?」[銃を構える]


マノ「どうしたも何も俺には関係があるんだよ!」

「ジャック・F・エバース!!」

「俺はな1度ボスと闘(や)りあったことがある」

「しかし、結果は惨敗だった」

「あの日俺は初めて敗北を知った...」

「俺の得意とする近接戦でな...」

「でもよぉ!敗北ってのも悪くねぇもんだなぁ!」

「俺より強ぇやつにやっと会えたんだ。この世界もまだ馬鹿に出来ねぇ!!」

「なぜってぇ!?それはよぉ」

「この俺がまだまだ強くなれる可能性があるって事だからだ!!」

「負けたら終わりだってぇ?違うなぁ!また闘って完膚無きまでに打ちのめせばいいだけのこと!!」

「だからよぉ、ここで俺と闘ってくんねぇかぁ?!!」


マノ・ガンバ戦 開始

マノ・ガンバ戦 第2


マノ「やるな…これが『HEX(呪い持ち)』か!」

「ふんっ!まだまだ俺をワクワクさせやがる!!」

「次は手加減無しでねじ伏せてやるよ!!!」


マノ・ガンバ戦第2

マノ・ガンバ戦 終了


マノ「…っが!」[倒れる]


ヴィルガ「マノ・ガンバと言ったな」

「お前は強い。俺達(HEX)を除けばこの全世界の誰よりもな」

「数多ある近接格闘を取り入れ(コピー)自分の物にしていた」

「そしてこの闘いでもお前は幾度となく成長を重ねた」

「あの日の敗北を知り、己の未熟さを知った」

「お前は生まれながらの才能を持ちながら努力を惜しまなかった」

「お前は戦士として人として見習うべき存在だ」

「もしお互い違う会い方をしていたら戦友として一緒に居ただろう」


マノ「ふん、そうか」

「あんたら『HEX(呪い持ち)』に褒めて貰えるたぁ光栄だな…」

「だがよぉ…俺は2度も負けちまったんだぁ」

「俺の存在意義(プライド)がズタズタだぜ」

「だからよぉ」

「いっその事俺を殺してくれや…」

「このまま生きていくのは辛すぎる」

「情けは要らねぇ」

「俺を...殺せ」


ヴィルガ「・・・そうか」


バァンッ![銃声]


エア「!?」


ヴィルガ「・・・」

マノ・ガンバへ死にゆく者に敬礼。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る