第52話 お話



「グルッ!」

「ん?どうした、ゴジ?あ、ギルマスが起きたのを教えてくれたのか?」

「グル!」

「よしよし。いい子だ」


 ゴジが、「頑張ったよ」とでも言うかのように胸を張っている。


 よし、あとはギルマスとの話を進めるだけか。とりあえずこれで不合格ってことはないだろうし、ジオに対応を任せたほうがいいかもしれない。


「黒の坊主。ちょっとこっちに来てくれ」


「?それは構わないが……」


「話があるんだ」


 

 いつものちょっと軽くて、親しみやすい空気は何処いずこ。ジオの時と同じく、軽い感じで接してくると思っていたギルマスが復帰した途端、俺に真面目な顔で話しかけてきた。


 やっぱ怒らせちゃったか?


 ジオとの戦いはギルマスがスキルを使わず手加減し、それでいてギリギリの決着だったのに比べ、俺は全力のギルマスを相手に、受付娘という部下がいるという状況下で、いかにも余裕そう倒してしまった。これを恥だと感じる人間だっているだろう。特に、強さにプライドをかけている人なんかは。


 正直に言えば、俺は今まで極小数の身内や例外を除く他人の感情を気にすることはなかったし、これからも気にするつもりはない。でもそれが俺やジオの出世に関わってくるなら話は別だ。


 人間は普段から平等な判断を下せようとも、事柄に私情が挟まった瞬間それが出来なくなる。なので、上司や先生などの“上”の人間の機嫌を損ねることは、大変よろしくない。



「話って?」


「あぁ。お前たちの冒険者としての将来についてだが……」


 

 やべっ。やっぱりそうか。



「ジオの方は普通の冒険者として活動できるだろうし、大成もするだろう。これは俺が保証する。ただしお前は、はっきり言うと、規格外なんだ」


「え?」


 怒られるんじゃないの?


「“え?”ってお前、自覚はなかったのか!?」


「いや……自覚はあった」


「なら、さっきのリアクションはなんだったんだよ。いや、それよりも問題なのはお前の強さだ。俺は現役を引退する前は、A級上位の冒険者だった。ギルマスになってから多少は腕が落ちたとはいえ、今でもA級の中堅ぐらいはある。それにお前は余裕を持って勝てたんだ。勝ててしまったんだ」


「お、おう」


 段々と話が読めなくなってきたぞ。真剣そうに呼び出して、ただただ褒めるだけってことはないだろうな?

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