第51話 ノアの試験 ⓶
スキルの効果は名前の通りの身体を強化させるものだ。しかし、これでギルマスの攻撃の速度とキレが良くなったとは言え、『身体強化』の強化倍率は精々1.5倍らしい(ジオ情報)。
その一方で体感だと、今のギルマスのステータスを最低5倍しないと俺とはまともに殺り合えない。やっぱり、圧倒的な差だ。
「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおら!」
どこかで耳にしたことがある掛け声を聞きながら、俺はギルマスの連撃を危なげなく躱す。
後しばらくはこれを続けるつもりだ。これでギルマスにあまり恥をかかせずに自分の実力が証明できる。そしてギルマスが何か一つでもミスを犯したら、その瞬間に叩けば少なくとも試験は合格だろう。
「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおら、おらおらおらおらおらおらおらおら!」
よし。少しずつだけど段々とギルマスの速度が落ちてきた、おそらくスキルがそろそろ切れるんだろう。後少しだ。
「おらおらおらおらおらおら、おらっ……あぁ!」
「決めだ!」
高速の連撃を躱し続けること約3分。ようやくギルマスが少しミスってくれた。ヒラヒラと躱される連撃に少し焦ってしまったのか、ギルマスの切り込みが若干大振りになる。
その僅かな隙を活かしきって、徹底的な一撃を入れる!
人間離れた俊敏ステータスを活かし、一気に踏み込む。全力で叩くと死んでしまうので、控えめな膝蹴りをギルマスの腹に打ち込むと、5メートルほど吹っ飛んでいった。
ギルマスを気絶させてしまったかもしれないとビビってると、やや遅れて受付娘の判決が訓練場に響き渡る。
「し、勝者、ノアさん!」
ギルマスが負けるとは思ってなかったのか、声の驚きが隠しきれていない。
「ふぅー……力加減はギリギリだったな。もう少し練習した方がいいか?」
「おーい!何、ギルマス吹っ飛ばしてんだ!」
「あ、ジオ。終わったぞ」
「“終わったぞ”……じゃない!ギルマスは元A級冒険者なんだ。なのにさっきから攻撃も当たらないし、一撃で吹っ飛ばしちゃったじゃないか!ノアのステータスはどうなってるんだよ!」
「ステータス?確か、平均が4000ちょっとだが?」
「真面目に聞いた僕が間違っていたよ……」
あぁ、ジオがなんか諦めの表情をしてる。確かに普通に考えればおかしい数字かもしれないけど、まだスキルも使ってないからな。この程度で一々驚いていたら困る。
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