第50話 ノアの試験 ⓵
「いやぁ〜参ったな。ジオって言ったか?……お前強いな。うっし、合格だ」
「ありがとうございます。ギルドマスターも相当強かったですよ。実際、勝てたのは奇跡のようなものですし」
「そうかそうか。慢心しないのも大切だ」
「はい」
うわっ!ジオとギルマスが、なんか河原で殴り合った後の友情みたいな空気出して歩いてきたぞ……そんなに仲良くなる要素あったか?
とりあえず今はジオの奮闘を褒めてあげないと。
森の中、訓練された私兵5人相手に逃げられてたんだから相当強いとは思ってたけど……コイツは想像以上だ。
「お疲れ様だ、ジオ。お前は想像以上に強かったよ」
「あぁ、ありがとう。不合格の心配はないだろうけど……ノアも頑張ってきて」
「おうよ!」
さて、問題はどうやって戦うかだ。ギルマスは、正直に言えば、さっきのジオとの戦いを見るに普通の基準で考えれば相当強いだろうが……俺と比べてしまえばとてつもなく弱い。
相手が弱いってことはこちらの戦いに選択肢があると言うことでもある。
装備は昨日と変わらずバタフライナイフと鎖でいいとして……攻撃を喰らうつもりはないから服も今のままでいい。問題はどんな戦いをすれば最善の結果を導けるか、だ。
この試験の目的は、冒険者ランクを飛び級する事。ならば、出来るだけ圧倒的で一方的な戦いをしたほうがいいのか?
……いや、ここでギルマスをボコしすぎると後々関係が悪くなってランク上げに響くかもしれない。
そうだな……実力をある程度隠して戦うのが一番だろう。
「黒の坊主!準備は出来たか?」
「えぇ。いつでもどうぞ」
「よし、始めてくれ」
ギルマスからそう言われると審判係の受付娘がすぐに試合開始の合図をした。
「両者の確認が取れたので、冒険者申請試験を開始します。では……始め!」
「おらぁぁああ!」
「……っ!」
さっきの試合とは打って変わって今度はギルマスがすぐに突っ込んできた。
「はっ!」
「うおっ!大迫力!」
やべっ!
「今のを避けるとはな。俺の全力の一撃だったのだが」
「いえいえ、結局避けるのはギリギリでしたし」
「おうおうおう!だったら今度はスキルつきだ!」
そう言うとギルマスは、スキル『身体強化』を発動さのだろう。ギルマスから感じる圧が倍に跳ね上がった。
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