第53話 決断

 


 段々と話が読めなくなってきたぞ。真剣そうに呼び出して、ただただ褒めるだけってことはないだろうな?



「俺は何年もレベルを上げて、技術を磨いて、ようやく手に入れた戦闘力を、いくら才能があるとは言え、お前の歳で超えられるわけがない。さっきのジオって坊主が手加減した俺に勝てたのは彼に天性のセンスがあるから……あいつの才能だけでも、将来S級は固いぞ。なのに、お前はなんだ?……どんな地獄をを見ればそんな力が手に入る?お前のことを心配して言ってるんだぞ」


 

 なんだ……そんなことか。まぁ、確かにこの歳でこの強さはおかしいかもな。俺があの洞窟の侍オーガとの初戦を生き残れたのも……奇跡みたいなものだったし、あれがなければ従来よりももっと効率の良いレベリングなんてできなかっただろうな。


 それに勇者にはレベルが上がる度に上昇するステータス値の倍率が高く設定されているって説明で言ってたはずだ。



「強さの秘訣を聞くのは冒険者のマナー違反だと聞いたが?」


 

 ギルマスは口が固いだろうし、俺に何が起こったが教えも誰かにバレる心配はないだろうけど…………逆に、言ったところで、これといったメリットもない。


 ならば不必要なことはしない。



「そ、そうか。いや、そうだったな。要らぬことを聞いた。すまない」


「まぁまぁ、気にすんな」



 なんか、ギルマスから可哀想なものを見る目で見られたけど…………まぁいっか。


 話も終わったからジオ達がいるとことにもどると、ギルマスが正式に試験合格の発表をしてくれた。



「という訳で、二人とも飛び級スタートが出来ることになった、のだが……」


「のだが?」


「ノア。お前はC級からスタートだ」


「はい?」


「お前は強すぎるんだ。ギルマスの権限で特例としてC級にあげる。ほっといてもすぐに上がって来るだろうけど、それだと進級申請の書類を二回やらないといけないし、めんどくさい」


「どんな理由だよ、おい」



 俺も同じようなことをやりかねないのは別として、C級スタートは別に悪いわけではない。ランクを上げなくとも国境を越える最低ランクに到達したってことだ。アリスを迎えに行くのが早くなる。


 ただ、こうなるとジオの冒険者ランクが問題になってくる。


 さっきのギルマスの口調からして、ジオは普通にD級からのスタートだろうな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る