第48話 ジオの試験 ⓵



「では……冒険者申請試験、開始!」

「『フロストフィールド』」

「ほう?」


 先手を打ったのはジオ。


 ジオが使った魔法『フロストフィールド』は、辺り一帯を氷で覆う効果がある。本来なら、地面を氷で覆ったところで自分も足場が悪くなると言う事で、あまり好まれない技なんだけど、ジオの『フロストフィールド』は少し特殊で、ジオの足の裏にも氷が展開される。


 氷同士が接することによって極限まで摩擦を軽減して、フィギュアスケートみたいに素早く器用に動き回ることができるようになるのだ。そして立体的に氷を展開すれば、それだけ立体的な可動域が増えていくジオの強力な技だ。


 魔法系のスキルには少し効果に個性が現れる。スキルの根本的な効果は変わらないが、魔法はつまりはイメージだ。イメージは一人一人違うし、その個人差が魔法の詳細を決めるらしい。例えば、人生を魔術に捧げた老人と昨日スキルを手に入れたばかりの子供が同じスキルを使ったとしても、絶対に老人が勝つ。魔法に詰まってる工夫のレベルが違うからだ。


 その点、ジオは天才と言っていいほどの結果を出している。それはジオが(ハーフエルフなので年齢はわからないが)かなり若い方であろうはずなのに既にスキルを最も効率よく使うための、一種の正解にたどり着いているから。この世界にはスケート競技などは存在しないはずだから、ジオが自分で一から実験して作り上げた技だってことだ。


「だが……この程度の氷などすぐに割れる!」


 流石に足場が悪いところで戦いたくないのか、今度はギルマスが動いた。


 大剣を大きく振り上げ、逆手に持つと、体重を乗せた一撃で自分の足付近の氷を全て割った。それも、まるで発泡スチロールかのようにいとも簡単に。


「あれ?……ジオは、“魔法で生成された氷は普通のものより硬くて、強いものだと鋼鉄レベル”だとか言ってた気がするんだけど?」


 あのギルマス、鋼鉄破れんの?マジで?…………ヤバ。


 しかしジオは驚くそぶりも見せないまま、ぎりマスに突っ込んでいく。


「ほう……向かってくるのか。逃げずにこの俺に近ずいてくるのか」


 どこでそのセリフを知ったぁあ!


 いや……まだ偶然同じことを言っているだけという可能性もある。


「近ずかなきゃ、ギルマスをぶちのめせないんでな」


 なぜ、ジオが続きを知っている!と言うか、ジオのキャラが変わってる!?


 もしかして二人とも転生者とか?いや……偶然だろ偶然。絶対偶然。……多分。

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