第26話 ペンドラ ⓵


 我は古代竜ペンドラ。レイナ洞窟の最上層を住処としている。


 我はこの世界の下位女神と契約をし、ここまで登ってきた人間たちの相手をする代わりにそれ以外の時は、静かに眠っていていい権利を手に入れた。我々古代竜は竜族の中でも竜王やその幹部の次に強い。元は普通の竜だったが幾たびの戦場を乗り越え、生き残り、強くなった。


 しかし、強くなったはなったで、暇だ。なのでここで眠りながら、つい最近まで強き者が現れることを待っていた。つい最近まで………。

 

 彼の存在には驚いた。今まで、この洞窟に転移させられた奴の中でここまでやってきた者はいなかった。なのに、彼の気配を感じる。彼は今、扉の向こうで古代遺跡にいる魔物を易々と討伐していた。この世界の上級ダンジョンに居るような魔物を、だ。


 また、彼と共にいる気配も妙だ。ちっぽけな気配が一気に大きくなったり、大きな気配が急にまたちっぽけになったり。しかし、なぜか力を抑えているような気配も感じる…………。

 

 さて、そろそろ来るか?今、気配が扉の向こう側で止まった。そして、扉が開く。


「グガガガガガァァァアァァァァァアアアアアア!」

「おっ!ドラゴンじゃん!女神はテンプレが好きだな。まぁ、これなら大丈夫だ。俺が先に一回叩くからゴジはその後に倒してくれる?」

「グルッ!」


 妙だ、なぜ畏れない?なぜ震えない?なぜ我が威圧しているのに、そんなヘラヘラとしていられる?まさか、我が畏れるに足らぬ存在だというのか?…………そんなことが許されるか!我は古代竜!今まで何人もの人間を焼き殺し、今まで何回も討伐隊を叩き潰してきた。この碧の鱗が見えぬか!このミスリルのような爪が見えぬか!我は畏れられる者!覇者だ!


「グガガガァァァァアアアアアアアアアア!」

「おうおう。随分とご立腹の様子。こいつは楽しそうだ!」


 次の瞬間、彼は一気に飛び出した。


 速い、速すぎる!我がようやく目で追えるのだ。人間が出していい速さではない!これでは、爪や尾の攻撃は当たらないだろう。……ならば『竜の息吹』で辺り一帯諸共彼を焼き尽くしてくれるわ!


「グガガァァァアアアアアア、ガグッ!?」

「ははっ!驚いたか?ゴジは地竜だ。今、第三形態になった。すごいだろ〜。俺が元いた国の竜種みたいなんだよな。って、待てよ?これ怪獣決戦じゃなねーか!」

「グガガ!?」


 後ろから声がする?はっ!い、いつの間にか背後を取られている!?今、大きくなったちっぽけな気配に気を取られすぎた!それより何なんだ、あの竜は!翼がないということは地竜なのだろうが、あいつからは竜……いや、怪物としての威厳を感じる。逆らってはいけないようなオーラを感じる!

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