第23話 火薬



「グル?」

「ん?これが何かって?よくぞ聞いてくれた、ゴジ君!人類最強の殺戮兵器……」


 少し勿体ぶったその言葉と共に、侍オーガから奪った鉄製の刀を三等分に割った物を錬成陣に乗せ、錬成陣に魔力を流した。

 

 瞬間、一瞬光ったと思ったら刀はみるみる形を変え、粉になった。


 内心「おっしゃぁ!!」と叫んでいるところを制し、自分に落ち着けと言い聞かせる。


 冷静な心のまま、残りの二つも錬成して粉を作る。


「よし、ここからが本番だ」


 次に、錬成した三つの粉を描きたての物質配合用の錬成陣にのせる。本当なら、手で混ぜてもいいが、こっちの方が精密だし、新しく習得した技を使いたくなるのは人間誰しも一緒だろう。


 物質配合の錬成陣に魔力を流し、錬成の光が治ると、そこには一握りの黒い粉があった。


 しかし、まだ喜ばない。


 フラグを立ててはならないのだ。これがただの黒い粉で、目当ての物ではない可能性もある。爆発するかどうか、これを確認しないといけない。

 

 とりあえず適当な布を千切り、着火させる。それを少し離れたところに置いてきた黒い粉に投げる。


 3…………………………

 2……………

 1……


 バッゴォォオオオオオオォンン



「おっしゃぁああ!!火薬だぁぁああ!!」

「グルル♪グルル♪」


 見事な爆発だった。壁も抉れている。あれは火薬で間違いないだろう。ゴジも爆発がおもろしかったのか、踊って喜んでいて結構可愛い。


 いや、火薬でなくとも効果が似てればどうでもいい。

 

 ただ、これで火薬が手に入った。この世界は剣と魔法のファンタジーワールドらしいので、俺が初めてこの世界で火薬を作ったかも知れない。

 さぁ〜て、火薬があるならいろいろ作れるぜ……

 

 ん?剣と魔法の世界だって?そんなもんクソ喰らえ。


 俺は生き残り、アリスとの約束を果たし、女神という名の害虫を駆除する。火薬があれば、これが楽になるんだ。


 そうと決まれば、すぐに取り掛かる。そもそも銃の仕組みは結構簡単で、どちらかというと構造より素材の問題になると思う。


 というのもシンプルな銃は、筒の片側を塞ぎ、出来た容器に火薬を入れ、その上に弾を入れ、火薬を爆発させることでできたエネルギーを使って、弾を飛ばすっていう感じだ。これぐらいなら錬金術で出来るはず。

 

 ただ必要なのは何度も爆発の熱に耐えられる素材。地球ではスチールやアルミ合金なんかが使われてたけど今の俺にはそんな素材はない。この部屋に散乱してた鉱物には鉄らしきなんかがあったけど、コークスがないとスチールは作れないはずだ。……うろ覚えだけど。


 あとは何がある?地球にあった素材がダメなら………あ!ミスリルとかならいけるんじゃない!スチールより強そうだし、もう使わなくなったミスリル製のバスタードソードもある。試す価値はあるか。

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