第22話 錬金術
「やってみるか」
「グル!」
まず、この世界には錬金術のスキルツリーは存在するが、それがなくても錬金術が使えるらしい。理由は錬金術には『言語』があるからだ。
そもそも錬金術は錬成陣を描き、それを使って素材を合成したり、複製したりするのものだ。で、そのとき錬成陣に書く文字はそれぞれに意味があり、言語を成している。
この世界の錬金術のスキルツリーは実際の錬成プロセスを助けるものではなく、錬金術の言語を作るアシストをするものが中心となっているらしい。
つまりは、スキルツリーがなくても言語さえあれば錬金術は行使できるわけだ。
困ったことに、その言語は一人一人がオリジナル制作で、最低限必要な文字数でさえ膨大だ。このためレオナルドの時代には完成していた言語はひとつもなかった。
完成した言語がなければ錬金できないと言うわけではないが、ダ・ヴィンチが言う『完璧な作品』なる物が作れないらしい。
「そうか、言語か。言語を考えな……あ!あるじゃないか!一つ一つの文字に意味がある言語が!漢字ならこの世界にはまだないし、俺のオリジナルの錬金言語になるじゃないか」
厳密に言えば漢字はあるかもしれないが、錬金術言語として使われている可能性は低い。
それに初歩的なものしか作れないと思っていたところ、馴染み深い言語なら幾らか上級のものに挑戦できる。
「まずは、そうだな……バンッ!とこの世界での現代科学の幕開けを祝おうじゃあないか」
そうと決まれば早い。早速取り掛かろう。
step1
まずは魔石を砕き、水を加え、ペースト状にする。
step2
新しく出来た魔石ペイントで、錬成陣を描く。
俺の目当ての物を作ための下準備として、物質変換の錬成陣を描く。物質変換の錬成陣は二重円なので、今回必要な三つの二重円を学校のノートに描いていく。
次に、円と円の間に漢字を書き入れる。
一つ目は、铁と硫
二つ目は、铁と碳
三つ目は、铁と钾・氮・氧・钾・氮・氧・钾・氮・氧
の漢字を書き入れた。
step3
媒体を魔法陣に置いて、魔力を流す。
ちなみに、レオナルドの記憶を見ていく中で魔力の感覚や使い方がようやく分かった。これだけでも大収穫だが、この錬成が成功すれば俺は人類最強の殺戮兵器が手に入る。
察しがいい人は、漢字を見て俺が何を作ろうとしているのか分かったかもしれない。
「グル?」
「ん?これが何かって?よくぞ聞いてくれた、ゴジ君!人類最強の殺戮兵器だ!」
少し勿体ぶったその言葉と共に、侍オーガから奪った鉄製の刀を三等分に割った物を錬成陣に乗せ、錬成陣に魔力を流した。
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