第20話 過去の勇者



 ここの部屋に三ヶ月もいたんだ、そろそろ次に進まないとね。



 そうと決まれば早かった。あのあとゴジと俺はすぐにボス部屋を出発し、また洞窟を進んでいった。

 

 それから三日ぐらい何もない日が続き、ボス部屋から出て四日がすぎたとき洞窟の狭い道が一気に開けた。いつもなら気にも留めないが、この部屋には鉱石らしきものが散乱していて、奥の方にはテーブルに伏せている遺体があった。


「なんだ、この部屋?」

「グルル〜」


 ゴジがいかにも「分からないよ〜」みたいな感じで返してくれたけど、俺はゴジが生まれた時から一緒だから情報は期待はしてないんだよな。


 ま、とりあえずあの遺体を見てみるか。


 遺体は椅子に座り、木製のテーブルに伏せていて、手に何かを持っている。手にあるのは魔石のようなもので、拾い上げて埃を払うと何かが刻まれているのが見えた。


「なんか書いてあるけど埃をかぶっていて、読めねぇ。って!痛えぇぇぇぇ!」


 埃を払って目に近づけて見ていると、突然刻印が光り出し、今度は尋常じゃない頭痛が発生した。それは、ここ3ヶ月ぐらいで痛みに慣れたはずの俺でも呻くほどの痛み。


 痛みが治まったと思えば今度は大量の情報が頭に流れ込んできた。ほとんどは記憶のような断片的でぼんやりしたものだったが一つ、最後の方はメッセージみたいな文字が流れ込んでくる。

 

 内容は、


『我の名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。第一回勇者召喚の勇者パーティー付属、錬金術師のダ・ヴィンチだ。

 我ら勇者は、元の世界の様々な時代から集められた優秀な人々だった。その中でも極めて賢く、強く、技量に優れているものが勇者パーティーを組んだ。

 普段なら長々と事情を語るところだが、このレベルの魔石でも長くは録音できない。すぐに、本題に入らせてもらう。

 我々勇者パーティーの目的はただ一つ、魔王を倒すこと。

 魔王は定期的に現れるらしく、今回の魔王は特に強かったらしい。そしてあまりにも強かったため、魔法という不思議な力で我らが召喚されたというわけだ。実際、とても強かった。

 しかし、本当の問題は我らが魔王を倒した後。女神側から受ける扱いが変わったことだ。

 我らを召喚した女神側は今まで温厚だったものを急に態度を変え、彼らから見て『邪魔』な人間はすぐに排除された。私もその1人であった。お陰様で、この洞窟で寿命を迎えることになってしまった。

 なんとか気合いでここまで生き延びた。しかしそれも、もう限界だ。なので、ここまで辿り着き、この魔石を手にしたものには我の持つ錬金術(全て)を教えよう。

 そして、願わくばあの女神を……ぶっ殺して欲しい』


 とのことだ。

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