4杯目 節分の思い出。

ガチャ。


「ただいまー」


「おかえりー!」


今日は節分だ。給食でも節分のパッケージの大豆が出てきた。僕は今年で13歳になるのに、14粒入っていて少し大人になった気持ちになった。


ちゃちゃっと手洗いうがいを済ませ、友達と約束していたゲームに手を伸ばす。対戦型のゲームで、世界でたくさん売れたらしい。そのゲームの節分イベントで、鬼をたくさん倒せたほうが勝ちというミニゲームが開催される。それをやるために、今日はゲームの約束をした。


〜一時間後〜


ふぅ。ミニゲーム楽しかった。

今日は学校が特別日課で早く帰れたから、一時間ゲームをやっててもまだ3時だ。やっぱり早帰りは得だなあ。


ピコン!


お、僕のスマホがなった。

メッセージアプリで、別の友達がメッセージを送ってきていた。


[俺のお気に入りのカフェがあるんだけど、一緒に行かない?めっちゃ美味かったんよ!]


時間もあるし、行ってもいいかな。


[ちなみに場所は2丁目公園な!]


そんなメッセージが来たから、僕はすぐにこう返信して家を出た。


[今から行く行く!2丁目公園でまってて!]


〜5分後〜



「よぉ!」


「やっほ!早く行こうぜ!どこにあんの?」


「そう焦るなって。ここから多分6分で行けるからさ」


「ははっ、6分ってビミョーだな(笑)」


「うるせぇ!早く行かねぇと7分になっちまうぞ!」


「全然変わらねえじゃん(笑)

てかそっちのほうが焦ってるし」


面白いなあ。僕が言ったあとは何も言わなくなった。たぶん図星だったんだろう。子供っぽいところがまた可愛い。


僕たちはしばらく歩くと、一軒のあまり目立たない建物に着いた。


看板には[ほのぼのカフェ]と、大人しいフォントで書かれている。


「ついたぞ!」


「ほのぼのカフェ?なんかつまんなそうなカフェだな」


「こら!そんなこと言うな!めっちゃ美味しいんだって。これが。」


半信半疑でドアを開けると、きれいなカランカランという音がした。


「いらっしゃいませ。」


カウンターには、優しそうなおじさんがコーヒーを淹れていた。


「マスター!今日は特別メニューある?」


「あるよ。節分にちなんだ大豆を使ったソイミルクココアだ。」


「やったぁ!」


思ったより仲が良さそうで少しびっくりする。


「お、今日は友達を連れてきたのかい?」


「そうなんだ!俺の親友!」


「…こんにちは」


急に話を振られてこれしか言えなかった。


「よろしくね。君もソイミルクココア飲むかい?」


「あ、ハイ」


「かたまんなって!いつも元気じゃねえかよ〜」


「君もタメ口でいいからね。

はい。特製ソイミルクココアだ。少し温めてみたよ。」


おじさんがソイミルクココアを出した。

もうできたんだ。一口すすってみる。


美味しい。ほんのり温かく、飲みやすい温度だ。豆乳の風味もあって、とても美味しい。

美味しすぎてすぐに飲み干してしまった。


「マスター!めっちゃうまい!おかわり!」


「はいはい。値段も2倍だからね

君もおかわりするかい?初回限定で半額にしてあげるよ?」


「はい!おかわり、お願いします!」


「えーずるい〜!俺にはなかったじゃーん!」


「そうだったかな?でも3回目のご来店なのでなしだよ〜」


「えー!!マスターきらーい」


二人のやりとりにすこし微笑んでしまう。

マスター、面白いなあ。

カフェに誘ってくれたこと、改めて感謝だな。


「はい、ソイミルクココア2杯目!

おまけに鬼サブレもつけといたよ」


「マスターさすが!やっぱ好き!」


「ありがとうございます!」


節分にちなんだ鬼サブレもつけてくれるなんて、マスターは太っ腹だなあ。

相変わらずソイミルクココアは美味しい。


しばらくここで楽しい時間を過ごすと、後30分で塾が始まることに気付いた友達の発言でお開きになった。

それぞれ値段を払い終えて、店を出る。


「マスター!めっちゃうまかった!また来るね!」


「マスターありがとうございます!僕もまたきます!」


「2人とも、またね〜

次のご来店をお待ちしております!」


まだ少し残るソイミルクココアの余韻が、節分のいい思い出を作った。

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「カフェ ほのぼの」へようこそ! きみとおさる @kimitoosaru

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