第44話悩み、一息、謎の青年2

リリアンナはリンからもらったプリントを眺めながらぼふんっ!とベッドに寝転がる。

「オリジナル魔法…かぁ」

突然言われてもわからない、というのがリリアンナの本音である。かれこれ一時間はオリジナル魔法について考えているが、全く何も思い付かない。

「私もルイみたいに魔法が上手く扱えたら…」

そこまで考えてリリアンナはぶんぶんと頭を振る。ないものねだりは良くない。悩んでいるリリアンナの耳にノックの音が聞こえた。

「どうぞ~」

ガチャリ、と扉が開かれたかと思うとジャックが顔を覗かせた。

「…ココア淹れたけど、飲む?」

「…飲む!」

━━━━━━━━━━

「まだオリジナル魔法について考えてたんだ」

ジャックの淹れたココアを飲みながらリリアンナは頷く。

「期限は何時でもいい…とは言っていたけど…考えると止まらなくなっちゃって」

まだ湯気のたつココアを見つめながらリリアンナは呟いた。ジャックはそんなリリアンナを見てゆっくりと言葉を紡ぐ。

「…正直に言うと今の君にオリジナル魔法は無理だと思うよ」

「うぐっ」

「まともに魔法は使えないし、使えたとしてもすぐに失敗するし…」

「うぅ~…」

ジャックの言う事は最もで事実だ。リリアンナは耳が痛いという様に渋い顔をする。

でも、とジャックはリリアンナを見つめる。

「君が頑張っているのはわかっているし、それにいまこの時間だけはゆっくり何も考えずにココアでも飲もうよ」

その優しい言葉にリリアンナは頬を緩める。

「…うん、そうだね、いまはココアを飲んでゆっくりする」

リリアンナの返事に満足したのかジャックは頷くとココアを飲み干す。

「それじゃあ僕はもう寝るから、何かあったら言ってね」

「うん、ありがとう」

そう言ってジャックはリリアンナの部屋から出ていった。……それにしても

「ジャックのココア美味しいなぁ…」

初めてジャックのココアを飲んだ時も思ったが、だんだんジャックはココアを淹れるのが上手くなっていっている気がする。

「ジャックのココア…甘くて美味しいしなんだか…」

懐かしい、様な…そんな事を考えながらリリアンナはゆっくりと眠りについたのだった。


翌日、相変わらずリリアンナの遅刻癖は直らない。

「うわぁぁぁ!ち、遅刻~~~!?」

全力で走るリリアンナの隣でジャックはまだ眠いのか目を擦りながら空中でふよふよと浮いていた。

「一応聞くけど…何時に寝たの?」

「え!?わ、わかんない!」

「そっか」

ジャックはそれだけ言うとまたふよふよ浮きながら全力ダッシュするリリアンナのそばに浮いている。精霊だからなのか、空中浮遊はお手の物らしくこうやってリリアンナが遅刻する度にジャックは空中に浮きながら頑張れ~と声をかける。リリアンナはと言うとジャックのその魔法が羨ましくてたまらない。といった様子でじろ~っと目線を送るもジャックは気付かないふりをしていた。

「あっ…!」

「ん」

全力で走っていたリリアンナだが目の前に男性が近付いているのに気付かず、そのまま男性にダイブする形でぶつかってしまった。

「あたた…あ、す、すみません!!」

リリアンナは目の前の男性にペコペコと頭を下げる。

「…大丈夫、ですどこも怪我していないので」

そう言う男性は本当に何ともない様な表情でリリアンナを見つめていた。黒髪にピンク色の目、この辺りでは見かけない容姿だ。

「本当にすみません…あっ、もうこんな時間!?すみません!もう行きますね!」

リリアンナはもう一度頭を下げるとジャックと一緒に学園へと走っていく。

「彼女が…」

ぶつかった男性は小さく呟くとそのまま何も言わずに去っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る