第42話謎の青年
突然声を掛けられたのもそうだが一番不思議に疑問に思ったのは…
「あの…メルって…?」
「ありゃ、本人から聞いてないのかそれは悪い事をしたな…昨日君と一緒にお昼ご飯を食べた少女のことだよ」
謎の青年は一瞬びっくりした様な顔をしたかと思いきやすぐににへら、と笑った。
昨日一緒にお昼ご飯を食べた少女、それだけでリリアンナはあの綺麗な少女だと直ぐに理解した。
「食べ、ました…でもなんで貴方がそれを?」
「知っているかって?そりゃぁ勿論メルと友達だからさ」
メルという名前は昨日出会った少女の名前で間違いないだろう。この青年は少なくともリリアンナに害を与える様な事はしない…とリリアンナも判断したのかいつの間にか強ばっていた身体が緩くなる。
「それより!お昼ご飯!僕お腹空いちゃった!」
謎の青年は近くにあったベンチに座るとリリアンナに目線をおくる。こっちへ来い、ということだろう。
「お昼ご飯用意してないんですか?」
「今日は君に会いに来たから、その時にご飯を貰おうかと」
全く悪気の無い笑顔を浮かべる謎の青年にリリアンナは呆れた様な表情をするものの素直にサンドイッチを渡す。
「卵でいいですか?」
「食べられるならなんでも」
リリアンナの手にあるサンドイッチを謎の青年は受け取り頂きます、と言って口に運ぶ。その後ぱぁっと花が咲いた様なキラキラした表情になる。
「お、美味しい~~!!メルの言っていた通り君のサンドイッチは美味しいね!」
「あ、ありがとうございます?」
美味しそうにサンドイッチを頬張る姿は小さな子供みたいだ、とリリアンナは思った。二三個位食べ終えた頃、ふとリリアンナが呟く。
「あの、なんで私に会いに来たんですか?メルっていう子から聞いたからですか?」
リリアンナは首を傾げながらそう聞くと謎の青年はう〜んと考え込んだ後に答えた。
「メルから聞いたのも勿論だけど君が純粋に気になったからかな」
謎の青年はそう言ってご馳走様でした、と両手を合わせる。リリアンナも倣ってご馳走様でした、と両手を合わせた。
「気になったって…」
「メルから話を聞いたのもそうだけど君が…リリアンナちゃんが可愛くて堪らないから…それで直接会いに来たわけさ」
ふわふわな白髪と紫の瞳を持つ美形な青年からそう言われたら今頃女の子は顔を赤く染めるだろう。だがリリアンナは違った。
「会ったこともないのに可愛くて堪らないってどういうことですか」
リリアンナはじとーっとした目で青年を見つめる。最初から怪しいとは思っていたがまさかの不審者ではないだろうか
「あれ~これでいままでの子は落として来たはずなのにな~リリアンナちゃんは難しいね~」
リリアンナの様子に怯む事無く青年は笑う。どこまでも掴めない人だ。
「本当はね、君が知り合いに似てるから気になったんだ」
先程までのおちゃらけた雰囲気は無く真剣な顔で話を始める。
「僕の知り合いはね突然姿を消しちゃったんだ…だから君が知り合いに似てるって聞いて会いに来た」
「私に似てる知り合いさん…」
リリアンナは青年の言葉をゆっくり咀嚼して飲み込む。その知り合いは一体誰なのだろうか
「お、もうそろそろ時間だねじゃぁ僕はこれで」
「あっ、まっ待って!」
立ち去ろうとする青年にリリアンナは声を掛ける。青年はうん?とこちらを見返す。
怪しいけれど掴みどころが無いけれど
「サンドイッチ、美味しいって言ってくれてありがとう、ございます!白髪さん!」
リリアンナのその言葉に青年…白髪さんはぽかんとした表情をしたかと思うといきなり大声をあげて笑いだした。
「あっはははは!!まさかその為に呼び止めるなんて…しかも白髪さん…白髪さんねぇ…」
「な、なにか変な事でも?!」
未だに笑いを堪えきれていない白髪さんにリリアンナは怒りを覚えた。せっかく感謝を伝えたのに笑われるとは
「はーっいや、ごめんごめんやっぱり君に会いに来て正解だったよ」
白髪さんはそう言ってゆっくり微笑んだ。
「それに僕に対して敬語はいらないよサンドイッチこちらこそありがとう」
それじゃあまた、と言って手を振って歩き出した白髪さんの姿が見えなくなるまでリリアンナはその場に立ち尽くしていた。
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