第41話魔力

不思議な少女と出会ったその日の夜。ジャックが口を開いたかと思うとリリアンナに告げる。

「そういえばお昼から気になってたんだけど…」

「うん~?」

リリアンナは晩ご飯の食器を片付けながらジャックの言葉を待つ。

「君から不思議な魔力を感じるんだけど…」

「不思議な?」

ジャックの言葉に疑問を感じたのかリリアンナは手を止めてジャックへと視線を寄越す。

「そう、普段の君の魔力はなんというか…温かい感じだけどいまは少し冷たい気がする」

ジャックは説明しながら一緒に片付けていたお皿を次々と食器棚にしまっていく。リリアンナは不思議な魔力と聞いてお昼に出会った少女を思い出す。

「う〜んもしかして今日のお昼に出会った女の子の魔力が移ったとか?」

その言葉を聞いたジャックは目を丸くする。

「女の子?」

「あ、ううんこっちの話、でも私の魔力って温かいの?」

リリアンナは少女の事を濁すと魔力の話をする。ジャックはあー…と難しい顔をしながらまた詳しく説明する。

「人には魔力があるでしょう?魔法使いも普通の人間もその人達それぞれに魔力の"形"があるんだ」

「魔力の形?」

リリアンナが首を傾げるとジャックは続ける。

「簡単に言えばその人の人柄を表すもの…かな?極悪非道な人にはどす黒い魔力が見えるけど誰にでも優しい人には温かくて太陽みたいな魔力が見える」

ジャックの説明にリリアンナは少し納得した様子で頷いた。

「なるほど…私の魔力は温かいって言ってたけど?」

「君は…そうだね、優しいところもあるし何より前向きな性格だからね、だから温かい魔力なんだよ」

ジャックはわかった?という様に人差し指をぴしっと立てる。そして言った。

「そんな君から冷たい魔力を感じたから何かあったのかと思って…何も無いならいいんだけど」

そう言うとジャックは片付けを再開する。リリアンナは確実にあの少女が原因だと考えたが妙に引っかかる。

出会った少女は冷たい雰囲気など無く優しくてそれこそジャックが言ったような優しい太陽みたいな人だ。そんな人から冷たい魔力があるとは信じられなかった。

「なんなんだろう…」

リリアンナは小さく呟きながらジャックに倣い片付けを再開した。

…………………………

翌日、相変わらずのポンコツぶりを発揮して遅刻ギリギリに教室に着き、授業も散々だったがリリアンナはへこたれる事はなく、昨日出会った少女を探していた。

「う〜ん…お昼なら出会えると思ったんだけど…」

サンドイッチの入ったバスケットを抱えながらリリアンナはきょろきょろと辺りを見回す。けれど肝心の少女はいなかった。

「まぁ仕方ないか…そんな日もあるよね、ルイ達と一緒に食べよう」

そう呟き踵を返そうとすると不意に声をかけられた。

「メルを探しているの?でも残念だね今日は忙しいから来ないよ、その代わりに僕とお昼を食べよう」

驚き振り返るとそこには顔立ちの整った青年がいた。

「えっと…」

「やぁ初めましてリリアンナちゃん…だよね?僕は名前は言えないから好きに呼んでくれ」

そう言って笑う青年は掴みどころが無さそうだとさすがのリリアンナもわかった。

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