番外編 中等部時代の二人
これはまだリリアンナとルイが中等部だった頃のちょっとした話である。
「ルイ君!わ、私と付き合ってください!」
顔を赤く染め目を潤ませながらそう言う少女。
ルイはそんな少女に対してなるべく優しい声で言う。
「…ごめんね、僕、好きな人がいるんだ」
その言葉を聞いた少女はひどく落ち込んだ様子で涙を滲ませながら去っていった。すると入れ違いでリリアンナがやってくる。
「あれ?ルイこんなところで何してるの?」
「ちょっとね…そういうリリーこそ屋上に何か用事でもあるの?」
ルイは告白されたとは言わずに話題を変える。リリアンナは特に気にしていない様子で答える。
「あ、うんあのねメルトと一緒にお昼ご飯食べようって話になってね」
その言葉を聞いた瞬間、ルイの表情が少し陰る。だがリリアンナはそれに気付いていないのか座れる場所を探していた。
「よかったらルイも一緒に食べる?まだ食べてないよね?」
「あぁ…うん、食べてない、けど…」
「せんぱーい!」
するとそこに明るい声が響いた。屋上の重たい扉を開けながら入ってきた少年はお弁当箱を持ちながらとても嬉しそうな表情をしていた。
「先輩!遅れてすみません!一緒に…って…」
少年は嬉しそうな表情でリリアンナの元へ駆け寄るとルイの姿を見てあからさまに嫌そうな顔をする。
「…ルイ先輩も居たんですね」
「まぁ…ちょっと」
少年とルイの周りの空気が重たく、嫌悪感が漂っていた。
「メルト、良ければルイも一緒にお昼ご飯いいかな?みんなで食べればきっともっと美味しいと思うの!」
そんな二人の空気を壊すようにリリアンナが笑顔で少年───メルトに声をかける。
「えー!?………まぁ先輩がそう言うなら…」
メルトは落胆した様子で、けれど大好きなリリアンナのお願いを無下に出来ないからか、渋々といった様子で了承した。
「……せっかく先輩と二人きりで食べれると思ったのに…」
メルトの言葉はルイの耳にはしっかりと届いた様でなんとも言えない心境になる。
………ルイとメルトの仲は悪い。理由は一つ。リリアンナの事だ。メルトはリリアンナに対して強い憧れと恋心を抱いている。一方ルイも同じ様に幼なじみであるリリアンナに対して恋心を抱いている。
何かと一緒にいる事が多いリリアンナとルイを見てメルトは面白くないのだろう。ルイに対して敵対心を抱いていた。リリアンナはそんな事はつゆ知らず、二人に仲良くなって欲しいと何かと引き合わせようとする。それが逆効果である事も知らずに…
「それじゃあ、いただいます!」
リリアンナは手を合わせてそう言う。リリアンナを挟んでメルト、ルイが座る。
「わぁ、先輩の玉子焼き美味しそうですね!」
「ありがとう、今日は時間があったからお弁当手作りしたんだ」
リリアンナは微笑みながらそう言う。メルトは目を輝かせながらリリアンナに聞く。
「先輩の手作り!?いいなぁ…良ければ僕のウィンナーと交換しませんか?」
「うんいいよ」
そう言ってリリアンナはメルトのお弁当箱に玉子焼きを入れる。メルトも同じ様にリリアンナのお弁当箱にウィンナーを入れた。
「えへへ…先輩の手作り…」
メルトは嬉しそうに顔を綻ばせながら玉子焼きを口に運ぶ。その様子を見ていたルイは少しだけ嫉妬心を抱いた。
「…ねぇリリー、僕のデザートの苺いる?」
「え!いいの?」
「もちろん、リリーは甘い物好きだよね、良ければ僕にもハンバーグ一口くれないかな?」
ルイの提案にリリアンナは目を輝かせた。リリアンナが甘い物が大好きなのは幼なじみであるルイにはよく分かっていた。
「はい、どうぞ」
ルイがリリアンナのお弁当箱に苺を入れる。リリアンナは嬉しそうにしながらハンバーグを渡そうとした。
「あ、ハンバーグちょっと大きいから半分にするね」
「うん」
リリアンナはハンバーグを一口サイズに切った後、ルイの目の前までハンバーグを持っていく。
「え」
「はやく食べないと落ちちゃうよ?」
リリアンナは所謂あーんをルイにしようとしていた。流石のルイもそれは予想出来なかったのか一瞬固まるも素直に口を開いた。
「ん、美味しい」
「よかったぁ」
リリアンナは嬉しそうに目を細める。ルイも照れながらもハンバーグを食べていた。
そんな様子を見たメルトは耐え切れないといった様子で声を上げる。
「う~~~!!ルイ先輩ばっかりずるい~~!!僕も先輩にあーんされたい!」
むぅ、と恨めしそうにメルトはルイを見つめる。メルトには悪いがいい思いをした…なんてルイは考えていた。
リリアンナはそんな二人を見て不思議そうにしていた。
リリアンナとルイとメルト。三人で居ることが当たり前の事だった。だが近付いてきている卒業とルイとメルトにとって新しい恋敵が現れるのはまだ誰も知らずにいた。
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