第38話クレープ

テスト最終日。リリアンナは真剣な面持ちでテストに挑む。…今日頑張ればテストは終わりだ。リリアンナはそう思いながらテスト開始のチャイムを待った。

…………………………

「終わったぁ~~!!」

リリアンナは嬉しそうに伸びをして軽く息を吐く。そんなリリアンナを見てルイはくすくすと笑う。

「よく頑張ったね、リリー」

リリアンナの頭を撫でながら言うルイも何処か解放された様な表情だ。

「お疲れ様ぁ、合格していたらいいわねぇ」

様子を見ていたアンジェがそう言う。リリアンナの隣にいたジャックも小さく頷く。

「とりあえず今日はテスト終わった記念にちょっと贅沢しちゃおうかな!」

そう言って笑うリリアンナを見てルイは首を傾げる。

「贅沢って?何か欲しいものでも?」

「ふふーん、実は学園の近くに新しいお店が出来たの!そこのクレープが美味しいらしくって…テストが終わったら絶対に食べるつもりでいたの!」

その為にアリスからお小遣いを前借りした、とは流石に言わなかった。ルイは考える素振りをみせた。

「じゃぁ僕もそのクレープ食べようかな、リリーが食べたいって言うくらいなら絶対に美味しいよね」

そう言ってルイは財布の中身を確認した。

「…うん、僕とアンジェの分もありそう、良ければ一緒に行っていいかな?」

「もちろん!美味しいものは誰かと食べた方がずっと美味しいよ!」

そう言ってリリアンナは早速クレープが噂のお店へと向かう。その後を追う様にルイ、アンジェ、ジャックと続く。

…………………

「ほわぁ~どれも美味しそう~」

お店に着くと美味しそうなクレープがたくさん並んでいた。リリアンナは目を輝かせながらどれにしようか迷っている。

「本当にどれも美味しそう…アンジェは何が食べたい?」

ルイがそう聞くとアンジェは悩む素振りをみせた後、とあるクレープに指をさす。

「これが食べたいわぁ、いちごとホイップクリームのクレープ」

「わかった、じゃぁ僕はバナナチョコクレープにしようかな」

そう言ってルイとアンジェは店員らしき人物に注文をする。

「わ~わ~どうしようかな~…どれも美味しそう…」

リリアンナはまだ迷っている様だ。ジャックは何も言わずにリリアンナが決めるのを待っている。

「あ、そうだジャック!ジャックの分ももちろんあるから好きなのを頼んでね!…あんまり高いのは無理だけど…」

「僕は別に甘い物は…」

ジャックはそう言いかけてリリアンナの好意を無下にするのもいけないと考え、リリアンナと共にショーケースの中を見る。

「う〜ん、いちごチョコクレープか…バニラアイスクレープか…」

リリアンナはようやく二つに絞り込んだ様だ。その様子を見たジャックはじゃあ、と口を開く。

「僕がバニラアイスクレープ頼むからリリアンナはいちごチョコクレープにしなよ」

「え?でもジャックの食べたいものは?」

「僕は別に甘い物はそこまで食べたいわけじゃないから…」

ジャックはそう言って店員に注文する。リリアンナは慌てた様子で一緒に注文をした。

「じゃぁじゃぁ!半分こ!半分こしよう!」

リリアンナはそう言ってジャックの顔を覗き込む。こう言ったらリリアンナは折れないとジャックはわかっていた為、頷いた。

「注文決まった?」

そんな二人の側にルイとアンジェが近寄る。アンジェはもう既にクレープに口をつけていた。

「ここのクレープ美味しいわぁ、また食べたいわねぇ」

そう言ってアンジェはぺろりとクレープを平らげる。ルイはバナナチョコクレープにまだ口をつけていない様だ。

「先に食べてていいよ?」

「いいんだ、リリーと一緒に食べたいから」

リリアンナの言葉にルイはそう返す。するとそこに店員が二つのクレープを渡してきた。

「バニラアイスクレープといちごチョコクレープのお客様~」

「あ、はい!」

リリアンナは店員の元へと近付き、二つのクレープを受け取る。

「それじゃあ食べよっか!」

リリアンナはバニラアイスクレープをジャックに渡すと早速食べる場所を探す。ちょうど空いているベンチを見つけ、そこへ向かう。

「う〜ん、美味しい~!」

ベンチに腰掛けたリリアンナはいちごチョコクレープを一口食べるとそう言って顔をほころばせた。

「ん、確かに美味しいね、リリーは本当に甘い物が大好きだね」

「うん!甘い物大好き!」

ルイの言葉にリリアンナは頷く。リリアンナは小さい頃から甘い物が大好きでアリスの仕事が休みの時はよくパンケーキを作るように強請っていた。甘い物に関する話はリリアンナに、なんて一時期中等部の間で噂になったものだ。

「リリアンナ…これ」

ジャックがリリアンナの裾を引っ張るとバニラアイスクレープを差し出した。

「一口貰っていい?」

「いいよ」

そう言ってジャックはリリアンナの顔の近くにクレープを持っていくとリリアンナはそのままはむっとクレープを食べる。

「ん~~!こっちも美味しい!じゃあジャック、はい、あーん」

「い、いいよ自分で食べられる」

「まぁそう言わずに!はい」

リリアンナの圧に負け、ジャックは口を開く。そこにリリアンナのクレープが近付く。

「…ん」

「どう?美味しい?」

ジャックが食べたのを見てリリアンナが期待した様子で感想を求める。

「…甘い」

ジャックはそれだけ言うと手の中にあるバニラアイスクレープを食べる。

「うん、これも甘いよね」

リリアンナはそう言って残りのクレープを食べ進める。

テスト最終日は疲れながらも甘い一日となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る