第35話ココア
翌日も同じ様にリリアンナの家でテスト勉強をする事になった。ルイは相変わらず自分の勉強を進めながらたまにリリアンナの勉強の面倒をみていた。
「それにしてもメルトもまた来るなんて」
ルイの発言にメルトはむっとした表情で読んでいた本から目を離す。
「だってまた来ていいよって先輩に言われたんですもん、それに邪魔してないからいいじゃないですか」
「まぁそうだけど」
メルトの敵意剥き出しの眼差しにルイは慣れた様子でそのまま勉強に戻る。その間リリアンナは必死に問題を解いていた。
アンジェとジャックは昨日と同じく本を読んだりぼーっと様子を眺めていた。
「……あれ、この問題ってこれで合ってるかな?」
「どれ?」
リリアンナの小さな呟きにルイが身を乗り出しリリアンナのノートを見る。
「うん、その問題はそれで合ってるよ凄いねリリー」
ルイはそう言ってリリアンナの頭を撫でる。
リリアンナは嬉しそうに目を細める。
その光景を見たメルトは先程よりももっと強い敵意をルイに向ける。
「あらあらぁあの子ったらわかりやすいわねぇ」
「………」
アンジェの言葉にジャックは何も答えずに本を読み続ける。その態度が面白くなかったのかアンジェは不満そうにジャックに目線をやる。
「何か言ってくれてもいいじゃないぃ」
「君は僕が何か言うと面倒臭いこと言うから」
「面倒臭いってぇ?」
「……はぁ」
アンジェはわかって聞いているのだろう。表情は笑顔のままだ。ジャックは少し不満を感じた。アンジェの言葉にもだが、ルイとリリアンナの光景にも
「あ、そうだ今日も晩御飯食べていく?」
リリアンナが思い出した様にそう聞くとルイとメルトは答えた。
「ごめんね、僕は今日はいいかな昨日遅く帰って父さんに怒られたから」
「先輩の手料理!……はもちろん食べたいんですけど僕も今日はちょっと…なんでも有名財閥との会食だとか、はぁ本当に嫌ですよ…」
ルイもメルトもお金持ち故に色々あるのだろう。会食だなんてリリアンナには縁遠い話だ。
「そっか、それじゃあ今日はこれで終わりにしようか」
リリアンナがそう言うとルイもメルトも頷いた。
「アンジェ、帰るよ」
「はぁい」
帰る支度を済ませたルイはアンジェにそう声をかけるとリリアンナの方を向く。
「……いよいよ明日がテスト当日だね、大丈夫?」
「大丈夫!ルイに教えてもらったんだもん!合格するぞー!」
リリアンナのその様子を見てルイは微笑んだ。
「そっか…リリーなら絶対合格できるよ」
「僕も!先輩の事応援しています!」
二人の言葉を聞いてリリアンナは嬉しくなる。
大切な幼なじみと大切なかわいい後輩にこんなに言われたのだ。絶対に合格しなければ。
「それじゃあまた明日、おやすみリリー」
「おやすみなさぁい、明日は頑張ってねぇ」
「先輩頑張ってください!おやすみなさい!」
ルイ、アンジェ、メルトがそう言ってお邪魔しましたと言って帰っていく。見送ったリリアンナは小さくふぅ、と息をつくと机の上にある勉強道具を見た。
「よし!まだまだ勉強するぞー!…あてっ」
ジャックが軽くリリアンナの頬を抓る。
「流石に勉強し過ぎなんじゃない?休憩したら?」
「むぅ…でも絶対合格したいからまだ勉強する!」
「はぁ、仕方ないな」
ジャックはそう言ったかと思うとキッチンへと向かった。リリアンナは先に晩御飯を食べるのだろうと思い特に気にせず勉強を再開した。
…………
「はい、これ」
「…え?」
勉強に集中していたがジャックが声をかけた事によりリリアンナは手を止める。
ジャックの両手には湯気がたつココアがあった。
「これ、私に?」
「君以外に誰がいるのさ」
そう言うとジャックはリリアンナの側に座りココアを渡す。
「飲んでいい?」
「もちろん」
それじゃあ、とリリアンナは湯気のたつココアを一口飲む。
「……!甘くて美味しい!これジャックがいれたんだよね?」
目をキラキラさせながらリリアンナが問う。
「そうだよ、熱いから気をつけてね」
そう言ってジャックもココアを口に含む。我ながら上手くいれられた…と心の中で思う。
「えへへ、嬉しいな」
「何が?」
リリアンナはココアを飲みながら嬉しそうに微笑む。
「ジャックがココアをいれてくれた事、ココアが甘くて疲れが吹っ飛んじゃった」
「……そう、でも明日はテストだから今日は早く寝るんだよ」
「はぁい」
ジャックの言葉にリリアンナはそう答えると残りのココアを飲む。
……甘い。
この時間がずっと続けばいいのに、なんてリリアンナは思っていた。
…ジャックも同じ事を考えているとは知らずに
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