第34話テスト勉強

「ここは基礎問題を応用すればいけると思うよ」

「う〜ん…あ、本当だ!ありがとう!」

リリアンナはそう言ってルイに笑顔を向ける。ルイも微笑んだかと思うと自分のノートへと目を向けた。

リリアンナの家に着いて早速テスト勉強を開始した。ルイはテスト勉強をしながらたまにリリアンナの勉強を見ている。リリアンナは自分の事で精一杯でいる。そんな二人を見ながらメルトは用意された席で静かにリリアンナの方を時折見ながら本を読んでいる。アンジェとジャックもメルトと同じ様に本を読むかぼーっとするかのどちらかだ。リリアンナの家には遊ぶ様な物はなく、あるのは本か料理器具くらいだ。

「ねぇ、ルイここがわからなくて…」

「ん?…あぁここは引っ掛け問題だねちょっと貸して」

そう言って自然とルイとリリアンナの距離が近くなる。それを見たメルトは嫉妬心を剥き出しにしつつもリリアンナに言われた通り静かにしていた。

「あのメルトって子、本当にリリアンナが好きなのねぇ」

アンジェが小さくそう呟くとジャックはちらりとその光景を見つめた。

「……そうだね」

「まぁここにも嫉妬してる子がいるんだけどねぇ」

アンジェの言葉にジャックは何も言わずに読み途中の本に目を向けた。

…………そうして時間が過ぎた。ふと時計を見るとちょうど晩御飯の時間だ。

「もうそろそろ帰ろうかな」

ルイはそう言って帰る支度を始める。メルトも時間に気付いた様で慌てて同じ様に帰る支度を始めた。

「あ、待って二人とも」

リリアンナはそう言って二人を止めた。ルイとメルトはリリアンナを見つめた。

「せっかくだし今日はうちで晩御飯食べていきなよ、テスト勉強手伝ってくれたお礼」

リリアンナがそう言うとメルトは嬉しそうな声を出す。

「先輩の家で晩御飯!良いんですか!?…あ、でも僕何もしてないですけど…」

「大丈夫だよ、メルトも食べて欲しいな…ルイもどうかな?」

リリアンナの提案にルイは笑顔で頷いた。

「もちろん、リリーさえ良ければ食べていきたいな、リリーの手料理は美味しいし」

「ぼ、僕も!先輩の手料理大好きです!」

「ふふ、ありがとう」

ルイとメルトの承諾を得たリリアンナは早速勉強道具を片付けて料理を作る準備をする。

食材はじゃがいも、にんじん、肉、とある。

これは肉じゃがで確定かな…とリリアンナは思い、作り始める。

トン、トン、と食材を切る音と煮込む様な音以外に聞こえる音は無かった。

………

「はいどうぞ!」

リリアンナはそう言って肉じゃがを食卓に並べる。ほかほかと湯気のたつそれにメルトもルイも嬉しそうだ。

「わぁ!久しぶりの先輩の手料理!いただきます!」

メルトはそう言って手を合わせる。ルイもリリアンナもアンジェもジャックも続いていただきます。と言って料理を口に運ぶ。

「……ん、やっぱりリリーの料理は美味しいな」

「ありがとう!家事だけは得意だから!」

ルイの言葉にリリアンナはふふん、と胸を張る。アンジェとジャックは意外そうな顔をした。

「驚いたわぁリリアンナってポンコツのイメージしかなかったから意外ねぇ」

「……僕も、リリアンナの手料理初めて食べた」

二人の感想にリリアンナは笑顔で応える。

「ふふーんいつもお父さんの帰りが遅いから家事だけは上手になったんだよ!料理も洗濯も掃除もお手のものなんだから!」

自信たっぷりに言うリリアンナはそれはそれは嬉しそうだ。そんなリリアンナを見てメルトは呟く。

「本当に…先輩みたいな人がお嫁さんだったらいいのに」

その言葉にルイとジャックはぴくり、と体が動くも特に何も言わずに食べる手を進めた。

「えへへ…ありがとう!」

リリアンナは照れ笑いした。

…………

「ごちそうさまでした!」

全員が食べ終わり手を合わせてそう言った。

「はぁ~~先輩の手料理美味しかった~また食べたいです!」

「ありがとう、お粗末さまでした」

「食器くらいは洗うよ」

ルイがそう言ってキッチンに立つ。それを見たメルトはすかさずルイの隣に立つ。

「はい!はい!僕も!先輩の役に立ちたいです!」

その様子を見たリリアンナはくすくすと笑いながら言う。

「私が洗うからいいよ、二人とも早く帰らないと家族が心配しちゃうよ?食器の事は気にしないでテスト勉強手伝ってくれてありがとう」

「でも…」

「本当に助かったんだから、ルイと…メルトもまたテスト勉強手伝ってくれたら嬉しいな」

リリアンナがそう言って微笑むとルイとメルトは同じタイミングで頷いた。

「もちろん、わからなかったらいつでも聞いてね」

「僕もなにか手伝える事があったら言ってください!」

二人の言葉にリリアンナは胸があたたかくなるのを感じながらありがとう、と口にした。

その後はメルトとルイとアンジェがそれぞれの家に向かって帰っていき、リリアンナはそれを見ながら手を振った。

「よぉし片付けますか!」

大量にある食器を見ながらリリアンナは腕捲りをした。

「僕、手伝うよ」

ジャックがリリアンナの隣に立ち、スポンジを握った。

「別にいいのに」

「二人でやった方が早いでしょ」

そう言って二人で食器を洗う。その間は無言だったが、ふとジャックが呟く。

「ねぇ…」

「うん?」

「君はいつも頑張っているから…」

ジャックは食器を洗いながら続ける。

「たまには甘えて、誰かに頼ってよ僕でもルイでも」

その言葉にリリアンナは目を丸くする。それを見たジャックは優しく微笑んだ。

「僕は君の味方だからね」

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