第32話頼み事

「リリーに勉強を教えて欲しい?」

翌朝、学園に登校する最中ジャックはルイにそう頼んだ。

「夜遅くまで勉強してるんだ、昨日もずっとテスト勉強で起きてたし…君は勉強が得意だろう?なんとかリリアンナに勉強を教えてあげてくれないかな」

「それは別にリリーが了承するなら良いけど…」

ルイはう〜んと考える素振りを見せるとジャックに聞く。

「どうしてそんな頼み事を僕にしたの?」

「それは…」

ジャックは口篭る。ジャックもジャックで勉強を教える事は出来るがリリアンナは一人の力でなんとかしようとしている。幼なじみのルイにも頼らないのだ。ならばジャックが教えると言ってもリリアンナは首を横に振るだろう。

「…まぁいいや、リリーのテスト勉強がどこまで進んでいるか僕も知りたいしそんな風に頼まれたら断れないしね」

ルイが了承してくれた事にジャックは安心する。あとはリリアンナにこの事を伝えるだけだ。

…だがリリアンナはなかなか了承してくれなかった。

「どうして?ルイも良いよって言ってるよ?」

「ダメなものはダメ!だって私のせいでルイのテスト勉強の邪魔したくないもの」

リリアンナの強い意志にジャックは頭を抱える。リリアンナの他人を優先するところは素敵だとは思うがたまには自分自身を甘やかす事も必要だと思う。…その事を伝えてもリリアンナはいつも甘えている。と言うのだろうけれど…

と、そこに

「リリアンナ~ジャック~」

可愛らしい声が聞こえてきた。リリアンナとジャックが振り向くとそこにはアンジェがいた。

「アンジェ…?」

ジャックが不思議そうに首を傾げるとアンジェはいつも通りの笑顔でリリアンナに話しかける。

「いいじゃないテスト勉強ルイに教えてもらったってぇ、ルイも一人で勉強するよりリリアンナと一緒に勉強した方が捗ると思うんだけどぉ…ねぇジャック?」

アンジェがそう言ってジャックにウィンクする。ジャックはチャンスとばかりにリリアンナに言う。

「そうだよアンジェもルイも良いよって言ってくれてるんだから、それともリリアンナは二人と勉強するのは嫌?」

狡い質問だとは思ったがこうでもしなければリリアンナは首を縦に振らないだろう。ジャックの狙い通り、リリアンナはその言葉にうっ、となんとも言えない様な表情で受け止めていた。

「……ルイとアンジェに迷惑がかからないなら…一緒に勉強して欲しいな…」

リリアンナのその言葉にジャックは心の中でガッツポーズをする。

「で、でもでも!もし迷惑だと思ったらいつでも言ってね!」

「うん、わかったわぁルイにもそう伝えておくわねぇ」

…きっとルイはそんな事はリリアンナに絶対言わないだろうけれど、ジャックとアンジェは同じ事を思った。

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