第31話学生の敵

目の前にある教科書とにらめっこしながらリリアンナは小さく溜息を吐いた。

「うぅ~~~テストやだよぉ…」

そう言うとリリアンナは机に突っ伏して泣き言を垂れた。

リリアンナは自室で次に迫ってきている"テスト"の為に勉強していた。因みにテストの話が出たのは今日の昼休みが終わった後の授業の時だった。その時リリアンナは絶望したのを覚えている。

「でもテスト頑張らなきゃ…単位とれないし…」

リリアンナはそう言ってまた机に向かう。テストという単語が大嫌いなリリアンナはいつもテストが近付くとこうして夜遅くまで起きて勉強している。

「…ねぇ」

ジャックがなんとも言えない様な表情でリリアンナに声をかける。

「なぁに」

「僕、わざわざ君の部屋にいる必要ある?」

ジャックは所在なさげに自分の部屋から持ってきた椅子に座りながらそう呟いた。リリアンナは真剣な顔で言う。

「もちろん!ジャックが居てくれたら私がもし寝ちゃってもジャックが起こしてくれるでしょう?」

「もし僕が先に寝たらどうするの?」

「それはぁ…えっと…えへへ…」

ジャックが先に寝ることを考えていなかったらしいリリアンナは誤魔化す様に笑う。そんなリリアンナを見てジャックは溜息を吐いた。

「本当に…仕方ないな、でも驚いたな」

「なにが?」

「いや、こういうテストとかは大体ルイに教わるのかと思ってた」

ジャックは素直に告げる。ルイは成績優秀で周りからも尊敬される程なのはジャックも知っている。リリアンナに甘いあのルイならテスト勉強くらいなら普通に一緒にやってくれそうなものだ。

「あぁ、それは確かにそうなんだけど…」

リリアンナはジャックに向き合うと続ける。

「ルイもテスト勉強はいつも忙しそうだし私が勉強教えて~!って押し掛けても迷惑かなって…」

リリアンナの言葉にジャックは心の中で否定する。あれだけリリアンナに甘くて好意丸出しなルイがテスト勉強くらいでリリアンナを突き放すわけが無い、と

そんな事をもちろん知らないリリアンナはこうして夜中まで一人で勉強しているのだ。

「それに今回のテストは筆記テストだけだから!さすがの私でも筆記くらい簡単に合格できるよ!」

リリアンナえっへん!と胸を張る。

……いつも授業内容に追い付けなくてあたふたしているのに、とジャックは思いながらも口には出さなかった。本人がやる気を出しているのだからそれに水を差す行為はやめておくべきだ。

「本当に大丈夫かなぁ」

「大丈夫だよ!絶対!」

リリアンナのその根拠の無い自信はどこからくるのかジャックにはわからなかった。

ちらり、と時計を見るともう一時を過ぎるところだった。

「さすがに今日は寝ようよ、また遅刻するよ…それにまだテストまで時間あるんでしょ?だったら最初からそんなに頑張り過ぎたら疲れちゃうよ」

そう言ってジャックはリリアンナをベッドへと無理矢理押し込む。

「えぇー私はまだやれ、むぐ」

まだ勉強する気満々のリリアンナの顔に掛け布団をかける。

「だめ、もう寝なきゃ…僕ももう寝るよ、おやすみ」

ジャックがそう言うとリリアンナも仕方ないといった様子で頷いた。

「うん…夜中までありがとう…おやすみ」

リリアンナはそう言って寝る準備を始めたのでジャックは自分の部屋へと戻る。

「あんまり気は乗らないけど…」

ジャックはそう呟きながら何か考えているようだった。

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