第25話ポンコツと優等生

「契約成立したんだ、おめでとう」

翌日、普段なら遅刻ギリギリで学園につくリリアンナだが、昨夜の事でテンションが上がり早く起きた。ジャックは相変わらずの無表情でリリアンナの傍にいる。

「うん!えへ~!良かったよ!」

ルイの純粋な祝福の言葉にリリアンナは笑顔で答える。本当に、良かった。これからもジャックと一緒にいられるのだ。

教室へ向かい、契約成立した事をリリアンナがクラスメイトに告げると、驚き半分つまらないといった様子半分だった。だがリリアンナはそんな事も気にせず

「今日も頑張るぞー!」

などと意気込んでいた。だが…

「リリアンナ・フローテ!これで何回目ですか!」

「うぅ…すみません…」

リンの説教にリリアンナは小さくなる。

またしても魔法実技の授業中に低級魔法を失敗させてしまった。そのリリアンナを見たクラスメイト達はくすくすと笑った。

「やっぱり上級精霊呼び出して契約成立してもポンコツはポンコツだね~」

「ね~なんか安心した」

クラスメイト達に言葉にうぐ…となるリリアンナだったが確かにそうだ。

ジャックと契約成立した事で少々…いやかなり浮かれていた。リリアンナ自身は何も変わってないのだ。

「はぁ…もういいです、早く散らばった教科書を片付けてもう一度練習してください」

「すみません…」

リンの呆れた声を聞きながらリリアンナは片付けを始める。そのリリアンナの前でルイは魔法の練習をしていた。

「ファイア」

ルイがそう唱えると小さな炎がゆらゆらとルイの持つ杖の上で浮かぶ。それを見たクラスメイト達はおぉ!と歓声を上げる。

「すげぇー!炎系の魔法って練習してもなかなか発現しないのに!」

「ルイ君かっこいい~…」

そんな声が聞こえながらもルイは何も言わずにそのまま魔法の練習を続けた。

「流石ルイ・フォリス、優秀ですね」

「……はぁ」

リンが薄く笑いながらそうルイに言うとルイは面倒くさそうに答えた。

……ルイは凄いな。

リリアンナはそんな事を考えながら教科書を片付け続ける。するとある生徒が言った。

「ルイとポンコツって幼なじみって言ってもやっぱり違うな!ポンコツと優等生だ!」

その発言に他の生徒達が食いつかないはずも無く、その授業はリリアンナを嗤う声が響いた。

「………はぁ」

昼休み、もはやここが安息の場所となった中庭でリリアンナは今日はやけに甘いたまごサンドを頬張っていた。

「大丈夫?リリー…」

ルイが不安そうに尋ねる。リリアンナはしょぼくれたまま答えた。

「大丈夫…って言いたいけど低級魔法も使えないんじゃ…」

そう言ったリリアンナははっとしてルイの方へ向く。

「そうだ!ルイ!お願い!魔法の練習付き合ってよ!」

「えぇ?」

ルイはびっくりした様な表情でリリアンナを見つめる。

「お願い!このままじゃ馬鹿にされたままだよ!だから教えて下さい!」

リリアンナが頭を下げてそう言うとルイは仕方ないなぁといった様子でリリアンナの頭を撫でる。

「リリーにだけ特別だよ?今日僕の家で練習しようか」

ルイのその言葉にリリアンナは顔をぱぁっと明るくさせ頷いた。

「うん!ありがとう!」

そう言って撫でられたままのリリアンナを見つめながらジャックはつまらなさそうに溜息を吐いた。その隣にいたアンジェはルイとジャックを交互に見つめながらジャックとはまた違った溜息を吐く。

「本当に男って面倒くさい生き物ね…」

そう呟いた。

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