第23話七日目
いよいよ今日で契約期間が終わる。リリアンナは昨日のジャックの言葉を頭の中で反芻していた。
『まだ内緒…明日になればわかるよ』
「その明日になったけど…」
本来ならば今日この日は学園は休みなのだがジャックとリリアンナだけ契約の事もあり、学園に呼び出されていた。チラリ、と隣にいるジャックを見ると。相変わらずの無表情で立っていた。昨日のあの一件以来、喧嘩とは別でお互いに話しかけることは無かった。二人の間に流れる雰囲気は喧嘩していた時の様な険悪な感じがなかった事が唯一変わったことだ。
「揃いましたね」
そんな事を考えていたらリンがやってきた。
リリアンナは直ぐに姿勢を正した。ジャックは特に驚くことも無くそのまま立っていた。
「今日で契約期間は終わりです、そして使い魔になるかどうかですが…」
リンはジャックを一瞥すると言葉を続けた。
「使い魔になるかならないか…判断は精霊にあります、もしジャックが断ったらリリアンナ・フローテ、貴方は使い魔を使役する事は出来ません、ですがジャックは引き受ければ…貴方達は晴れて魔法使いと使い魔同士になり、強い絆で結ばれた事になります」
リリアンナは緊張した面持ちでリンの言葉を聞く。ジャックを見ることは出来なかった。
「…それではジャック、貴方の判断をお聞かせください」
「……僕は」
今日初めてジャックが口を開く。
「この一週間、彼女を見て最初は鈍臭いなとか馬鹿だなって思った」
リリアンナは軽くショックを受ける。無表情で何も言わなかったジャックがまさかそんな事を考えていたなんて…
「…だけど」
ジャックは続ける。
「彼女の良いところも見てきた、彼女はポンコツだと周りから罵倒されても諦める事はなかった、勉強にも真剣に取り組んでいた」
「……つまり?」
リンがそう聞くとジャックは前を向く。
「…僕は使い魔になるよ、彼女の…リリアンナの使い魔になってリリアンナを支える事を誓います」
その言葉を聞いたリリアンナはジャックへ目線を向ける。するとジャックもこちらを見つめていた。
「…よろしくリリアンナ」
「~~~ッ!ジャック!」
リリアンナはジャックに抱き着く。嬉しいという気持ちを隠さずにリリアンナは声をあげる。
「嬉しい!嬉しいよジャック!ありがとう!」
ジャックはリリアンナの笑顔を見て頬を綻ばせた。
「あぁ…その顔だ」
「え?」
「僕は君の…リリアンナの取り繕う様な笑顔じゃなくて心の底から笑っているリリアンナが見たかったんだ」
そう言ってジャックもリリアンナに腕を回す。
「…そうだ!リリアンナって、名前…」
「これからパートナーになるんだから名前を呼ぶのは当たり前でしょ?」
その言葉にリリアンナは嬉しくて涙が出そうだった。リンはその様子を微笑ましく見守りながら言った。
「…それではジャック、貴方はリリアンナの使い魔として彼女の傍にいますか?」
「あぁ、勿論ずっと一緒だよ」
「…そうですか、それでは契約成立の証を」
リンがそう言うとジャックはリリアンナに向き直る。リリアンナは不思議に思った後、あ…と声を出す。召喚の儀式の時、生徒達全員が契約した精霊に頬にキスをされていた。それをリリアンナとジャックもするのだ。
「な、なんだか緊張する…」
「ふふ…今更?」
ジャックは優しい笑顔を浮かべてリリアンナの頬に唇をよせる。
「~~~ッ!」
「…はい、おしまい」
頬に柔らかい感触を感じた後、ジャックはそう言って微笑んだ。
「契約成立…ですね、二人のこれからの活躍を期待しています」
リンがそう言って笑う。リリアンナとジャックは二人して笑いあった。
「よろしくねジャック!」
「こちらこそよろしく…リリアンナ」
二人はそう言って手を繋いだ。
………こうしてリリアンナとジャックは魔法使いと使い魔という関係になった。
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