第20話四日目
ボフン!という音と共に試験管から煙があがる。その場にいた誰もがその音を出した犯人をわかっていた。
「う…また失敗した…」
リリアンナはそう言うと煙をあげ続ける試験管を片付ける。
契約の話から四日目、今は魔法薬学について勉強をしていた。魔法薬学と言っても身体の傷を一時的に治すものや魔力を数分の間強化したりなど、普通の魔法使いはあまり使わないものが多いがマディス学園では必修科目となっていた。
「大丈夫?リリー」
ルイがすぐさまリリアンナの元へ近寄る。どうやら片付けを手伝ってくれるらしい。
「大丈夫だよ!心配してくれてありがとう!」
リリアンナはそう言って笑う。相変わらず魔法の勉強ではポンコツなリリアンナだが、リリアンナの前向きな性格のおかげで周りから罵倒されても教師に怒られても魔法に失敗しても学園に行かない日はなかった。
「……また失敗したの」
ジャックが小さく呟く。リリアンナはうっ、となんとも言えない表情で試験管を片付ける手を止めずに頷いた。
「君って本当に何も出来ないんだね」
無表情でそう言うジャックは悪気が無さそうにそう言うから余計心にくる。
結局この日もジャックに良いところを見せられず、昼休みになった。
「ん~…」
リリアンナは生ハムとレタスのサンドイッチを頬張りながら必死に何かを見つめている。ジャックはリリアンナとは一人分離れたところでたまごサンドを黙々と食べ続けていた。
「…何してるの」
最初は気にしていなかったジャックもリリアンナの真剣そうな表情が気になってつい聞いてしまう。リリアンナはジャックに目を向けずに言った。
「え~とね、今日の魔法薬学に失敗したから復習してるの!何処がダメだったんだろうなぁ」
リリアンナは膝の上にあるノートを見ながら頭を抱える。その様子を見たジャックは少しだけ驚いた。リリアンナはいつも魔法の勉強を失敗しているから真面目に授業を受けていないのだと勝手にジャックは思っていた。だがそれは勘違いでリリアンナもちゃんと真面目に授業を聞いて、こうやって復習しているのだ。
「…君って本当」
「…?なに?」
「いや…なんでもない」
え~気になる!なんてジャックに詰め寄るリリアンナを無視してまたたまごサンドに齧りつく。
リリアンナの知らないところでジャックはリリアンナを見直していた。
…そんな事を言ったらはしゃぎそうだから言わないけれど…
ジャックはそれから昼休みの間ずっと何も言わずに必死に復習しているリリアンナの傍にいた。
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