第19話三日目

「お、おはようポンコツ!」

リリアンナを見つけた男子生徒がそう言って手を振る。

「あはは…おはよう」

リリアンナもぎこちない笑顔で手を振り返す。最初の頃こそ"ポンコツ"呼ばわりされる度に落ち込んでいたが、言われ慣れてしまった為、リリアンナも特に何も言わずにポンコツ呼びを受け入れた。ルイもリリアンナがつっこまないからか、前の様に生徒達に怒ることもなくなった。

「あれ、珍しい今日は遅刻してないんだね?」

ルイが少し驚いた様な表情でそう言った。

「うん、なんか今日は早く起きて…」

契約期間まで残り四日、なんとか良いところをジャックに見せようと頑張っていたが、それよりもまずは遅刻癖を直さなければ…そう思ったリリアンナは目覚まし時計を三つセットし眠った。…朝からうるさいと目覚ましの音で起きたジャックに怒られたが…

「遅刻せずに来られて偉いね」

ルイはそう言うとリリアンナの頭を優しく撫でる。リリアンナは嬉しそうに目を細めた。それを見ていた女子生徒達は羨ましそうにリリアンナを見つめる。

「いいな~ルイ君に頭撫でてもらえて」

「私も撫でられたい~!」

そんな女子生徒達の声を聞いてもルイは何も反応しなかった。

「相変わらずリリアンナばっかりねぇルイって」

アンジェがそう言いながら髪を弄ぶ。ジャックはリリアンナの隣で無表情でその様子を眺めていた。

「君達って幼なじみなんだよね」

ジャックがそう口を開く。リリアンナは笑顔で頷いた。

「そうだよ、ルイとは小さい頃からずーっと一緒にいるんだ!」

「………ふーん」

リリアンナは不思議に思う。ジャックは先程より明らかに不貞腐れた様な表情になった、何か言ってしまっただろうか…そんな事を考えながら自分の席へと向かう。

────昨日の昼休みにあげたたまごサンドはジャックが食べたのか、ハンカチだけ渡された。リリアンナは少しだけ嬉しそうに笑ったのを覚えている。少しだけ、ジャックとの距離が近く感じた。

「君はさ…」

昼休み、ジャックは気に入ったのか木陰がある場所で寝そべりながらリリアンナに問う。

「ん~?なに?どうしたの?」

「…君はなんでそんなに僕に使い魔になって欲しいの?」

ジャックは無表情を崩さずにそう聞いた。リリアンナは首を傾げた後、さも当然の様に言った。

「だって、ジャックは私が呼び出したんだから」

リリアンナは空を見上げながら答える。

「ジャックは私の呼び掛けに応えてくれた唯一の存在だもん、それに出会えてこうやって一緒にお話出来るのも何かの縁でしょう?」

長い金髪を風に靡かせながら笑う。

「私、ジャックとお友達になりたい」

ジャックを見つめるリリアンナは嘘をついてはいない。仲良くしたい、一緒に居たい。どれも本当の気持ちだ。

「…そう」

「あ、照れた?」

「照れてない」

「そっかぁ」

そんな他愛も無い話をして一日が終わっていった。

無理はしなくていい、自分のペースでやればいいんだ。リリアンナはそう思いながらも後四日という事実を考えながらいつもの様にベッドへと潜った。

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