第18話二日目
「うわぁ~~~~!!!遅刻~~~!!!!」
朝から騒がしい声を上げるのはリリアンナだった。リリアンナは制服に着替え、まだ夢の中にいるジャックを起こす。
「ジャック!ジャック!起きて!じゃないと遅刻しちゃう~~~!!」
リリアンナが半べそをかきながらジャックの体を揺らす。
「う、う~ん…?」
ぱちり、と赤い瞳と目が合う。リリアンナはジャックに声をかける。
「ジャック!起きたんだね!さ!早く行こう!」
ジャックが起きた事を確認するとすぐにリリアンナはジャックをおんぶする。
「え…わ、ちょっと…!」
流石のジャックも驚いた顔をしてリリアンナの肩を叩く。
「そんな事しなくても歩ける、大丈夫…」
「もう時間ないから!このまま行くね!」
「ちょ…」
リリアンナは行ってきます!と言うと扉を閉める。ジャックは見た目が十歳くらいだからかリリアンナでも容易におんぶする事が出来た。
……結局この日も遅刻してしまいリンに怒られる羽目になった。
「うぅ…評価ダダ下がりだよぅ」
昼休み、いつもの様にルイと中庭で昼食をとる。違うのはルイの傍にはアンジェが、リリアンナの少し離れたところにジャックがいる事だ。
「早く契約成立させたいのに~…」
リリアンナがそう言うとルイは苦笑しながらお弁当箱に入っている卵焼きを食べる。
「…このままじゃ本当に駄目だよね」
リリアンナは考え込む様にサンドイッチを口にはこぶ。レタスと生ハムが入っていてマヨネーズの味もして美味しかった。
「…僕から言えるのは」
ルイは少し離れたところにいるジャックを見つめながら
「もう少しジャックと会話した方が良いかもね」
「…会話?」
「そう、リリーっって行動で示す事が多いから…ジャックにはもしかしたら言葉が必要なのかもよ?」
ルイの言葉にリリアンナは納得する。確かに、ジャックと暮らしはじめてからまともにジャックと一体一で会話をした事がない。いい事を聞いたとリリアンナはサンドイッチを食べ終えるとルイに感謝を述べる。
「なるほど…そっか、そうだよね…うん!ありがとうルイ!私もうちょっと頑張るよ!」
「うん行ってらっしゃい」
リリアンナはジャックのところまで走っていく。その姿を見送るルイを見ながらアンジェはトマトを頬張る。
「…本当にいいの?あんな風にアドバイスして」
「…なんで」
「わかってる癖に困るのはルイだよ~」
アンジェはルイの頬をちょんちょんとつつく。ルイは気にしていないといった様子で呟いた。
「僕は…リリーが幸せならそれでいいんだよ」
────────
「ジャック!」
木陰の下で昼寝をしていたジャックに声をかける。ジャックは少しこちらを見た後にまた眠りにつこうとする。リリアンナはそれに構わず言葉を紡ぐ。
「あのね、私、ちゃんとジャックのこと見てなかった、契約を成立するのに必死でジャックの気持ち考えてなかった、だから…ごめんなさい」
リリアンナは頭を下げる。ジャックは目を瞑ったまま何も言わない。
「これからはちゃんとジャックを見て、言葉で伝えるよ」
そう言うとリリアンナは残ったサンドイッチをジャックのすぐ側に置く。
「…これ、朝遅刻ギリギリでご飯食べられなかったから…一口でもいいから食べてくれると嬉しいな」
リリアンナは立ち上がりぐーっと伸びをして
「それじゃあ教室に戻るね、いらなかったらそのサンドイッチ返してくれていいから」
それだけ言うとリリアンナは去っていった。ジャックはリリアンナの気配が完全に消えた事を確認し、ゆっくりと起き上がる。
「…たまごサンド」
リリアンナが置いていったたまごサンドを見ながらジャックはそう呟いた。たまごサンドの下に敷かれていたハンカチを手に取り
「…返さなきゃな」
そう言った。
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