第10話メルシア
今から千年前、メルシアというとても強くて賢い魔法使いがいた。メルシアはその強さから周りの人々から神と崇め奉られ、その日何をすべきか、何を為せばいいのか告げていた。まさに神の様な存在。メルシアは人々から愛されていました。そうしてメルシアの言われた通りに人々は物を作り、畑を耕し、生活する為の術を覚え、街を創った。街が完成した人々はすぐにメルシアに伝えにいった。するとメルシアは笑顔を浮かべこう言った。
「これから貴方達は私の助言がなくても生きていけるでしょう…悲しまないで、これは永遠のお別れではないわ、いつか貴方達の築きあげた尊きものを未来に繋げて、託して、私はいつまでも見守っています」
そう言うとメルシアは人々の前から消えてしまった。人々はメルシアの事を信じ、これからは自分達だけの力でこの街を守っていこうと誓った。そして偉大なる魔法使いであるメルシアから名前をとり、今のメルシアという街が出来たのだ。
「そしてその日からメルシアは活気に満ちた街となったのです」
その話を聞いたリリアンナは少し興奮した様子でリンを見つめていた。
偉大なる魔法使い、メルシア。それは魔法使いなら誰でも知っている名前だ。そのメルシアの話を聞けた事がリリアンナにとってはとても幸せな事だったのだ。
リンはふぅ…と軽く息をつくと本をゆっくりと綴じる。
「そのメルシアには使い魔がいたとされます、とても優秀で従順な使い魔だと言われています…そして」
リンは生徒達を見つめると真剣な表情で言った。
「今日の夕方、貴方達の使い魔を決める召喚の儀を行います、貴方達の大切なパートナーとなる存在です、時に支え合い、励まし合う…そんな使い魔を召喚する大事な儀式です…くれぐれも浮かれたりしない様に、それでは授業を終わります」
リンはそう言って教室を去っていく。生徒達は少しざわついていた。
「とうとう僕達にも使い魔が…」
「すごく光栄な事だわ!早く夕方にならないかしら!」
生徒達はとても嬉しそうにしていた。それもそうだ。使い魔とは魔法使いにとって大事な存在。苦楽を共にする言うなれば一心同体となる存在なのだ。その使い魔を召喚する儀式を行うとなると喜んで当然だ。けれど────
「大丈夫かなぁ…」
リリアンナは不安でいっぱいだった。使い魔が嫌な訳ではない。むしろ会いたいし仲良く出来るのなら仲良くしたい。でも、どうしても考えてしまうのだ。リリアンナ自身が"使い魔を召喚する事が出来る"のかと…
何せ魔力値テストで三十ギリギリの数値を出したのだ、使い魔を喚ぶ事が出来ずに一人だけ使い魔がいない…なんて後ろ向きな事を考える。
「どうか私の元にちゃんと使い魔さんが来ますように…」
そう言ってリリアンナは祈るポーズをした。次の授業のチャイムが鳴るまでずっとその事を考えていた。
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