第2話 B

C「じゃあ、次!おまえやってみろよ!」

B「うん。」


友達Bに小さな注射器が渡された。

友達の名前を知らないので、便宜上『B』と呼ぶことにする。

注射器には、うっすらと黄色がかった液体が入っていた。


Bは注射器を受け取りその場に座った。

そして自分の腕に静かに刺し、液体を注入していく。


ふぅ。と息を吐き、目を閉じるB。


C「これなぁ!なんか貞子みたいなヤツが出てきて、なんかスゲーことが起こるんだってさ!何が起こるかはわかんねぇんだけどな!」

友達Cがオレに説明を始めた。便宜上Cと呼ぶことにする。

Cはガサツというか、なにかと声が大きく苦手だった。


C「必ず何か起こるんじゃなくて、起こらない時もあるんだってさ!コイツみたいに!」

と、Aを指差し豪快に笑った。


B「ん…。」


Bから声が漏れた。


B「んん…。ん。いや。」


小さく呟くB。

その場に居た全員が息を飲んだ。


B「イヤ!来ないで!来ないでっ!!!」


Bは叫び出し、手足をバタバタとさせ暴れ始めた。


B「やめて!!!嫌だ!!!嫌っ!!!痛い!!!やめてぇぇ!!!」


どんどん動きが激しくなるB。

その姿を見つめる3人。


B「嫌ぁぁぁ!!!!!」


と、一際大きく叫んだ後。

Bは静かにうなだれた。


C「B、大丈夫…か?」


いつもうるさいCだが、この時はさすがに静かに聞いた。


B「……。」

C「B?何があったんだ?」

B「わ…から…ない。」


Bは目を閉じたまま静かに言った。


B「わからない…。貞子みたいなひとがいて……。近付いて…きて…。でも…何もして…こなくて。何もしてこないのに…、すごい怖くて…。」


軽い深呼吸をして続ける。


B「何もしてないはずなのに…、体が引き裂かれるような感覚があって…。切り刻まれる感覚。それに………。えっ…?」


Bが未だ目を閉じたまま、何かに反応した。


B「あそこ…。」


Bは、プールの端。飛び込み台の辺りを指差した。


B「あそこ!あそこに居る!」


全員が指差した先を見る。

が、そこには何も居なかった。


B「『オレ』が!『オレ』が居る!」


Bは興奮気味でそう言うが、そこには何も居ない。

オレは少し考え、(もしかして…。)と思い、目を閉じた。


そこには。オレの視界には。


プールが広がっていた。

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