第6話 決意と成長
ーーポタ ポタ ポタ
『“アンタなんて死んじゃえばいいのにね? クスクス”』
!!
ーーバッ!!
「ウッ! ゴホッ、ゴホッ!!」
ここは……どこ? 洞窟の中……? 僕は死んだのか?
「起きたか……気分はどうだ?」
「!! あなたは……さっきの……」
あのグレイ・ドラゴンの首を一撃で落とした……夢じゃなかったのか……
「あんまり……良くないです……」
「クックッ! 素直な奴だな? 」
その魔族は愉快そうに笑い声をあげ僕に聞く。
「オマエはなぜ私を怖がらない? 反応をみるに魔族だということは分かっているだろう?」
「だって、貴女は僕を助けてくれたじゃないですか……命の恩人を怖がるわけないです!」
「……なら、こうしたらどうだ?」
ーースッ!
その魔族の女性は目に見えぬ速度で剣を抜き僕の首筋に押し当てた……でも……拾われた命だこの人がそうしたいなら抵抗する理由はない。
死にたくはないけど……でも、あの時の言葉は覚えている“おい? 大丈夫か?”何でもない言葉だ……ありふれてどこにでもある言葉……。
でも……
全てを失い絶望の淵にいた僕は救われたんだ……僕なんかを心配してくれる人がいるんだって……。
「貴女に救われた命です……好きにしてください」
それに……
「僕にはもう何もありませんから……」
「……オマエ、なにがあった? 死を受け入れられる人間は少ない、それがオマエのような子供ならなおさらだ」
「……実は僕……捨てられちゃいまして……ハハハ……」
「村から追い出される前に信用していた人に裏切られちゃって気が付いたら魔界まで逃げてて、あのグレイ・ドラゴンに襲われたんです……」
「間抜けな話ですよね……」
「なぜ捨てられた? 見たところオマエは体も鍛えてあるし思考もまともだ、追い出される理由は無いように思えるが……」
「僕には魔力もスキルも無いんです……弟たちはすごいスキルを手に入れたんですけど……」
「そうだったか……辛いことを聞いてしまったな配慮が足りず済まない、長い間一人だったものでな」
「……うむ……オマエ、いくあてはあるのか?」
「いえ……でも、気にしないでください! 出て行けと言われればすぐに出て行きますから……」
「……オマエ、私の弟子にならんか? ちょうど雑事も面倒になってきたところだしな……」
「えっ……?」
「オマエは素養もあるし、体の鍛え方も悪くない……いくあてがないなら私の弟子になれ」
「でも……僕なんか……貴女に迷惑を掛けるわけには……」
「なら言い方を変えよう、私の養子になって雑事を手伝ってくれ」
「オマエは家族に捨てられたのだろう? なら私がオマエの“家族”になってやる」
家族……この人と……? でも……僕はもう、誰も信じられない……。
「でも、僕は……」
「分かっている……裏切られ捨てられたオマエに私の言葉を信じろとは言わない」
「だが、オマエは復讐したくないのか? お前を弱いと捨てた者たちに……強くなって見返してやりたくはないか?」
「もう……あの人たちに未練はありません……でも……“貴女が僕を必要としてくれるなら僕は貴女の力になりたい”」
「ッッッッ〜〜」
ど、どうしたんだろう? 褐色の肌が赤く色付いて……言葉にならない声を上げてるみたいだ……怒らせる事でも言っちゃったかな?。
「お、オマエはよくそんな言葉をはずかしげもなく言えるな……!!」
「?」
「ま、まぁいい! ではオマエは今日から私の正式な弟子だ! まずは、私の身の回りの世話をして貰うぞ!」
「あと最低限、魔界で生き残るための力を付けてもらう! 分かったな?」
「は、はい!」
「よし! いい返事だ! だが、オマエはまだ万全ではない……だから一週間後に修行を開始するぞ」
僕の2回目の人生はここから始まった……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
そうして、あっという間に半年が過ぎた……。
“グルルルルルッアッッッ!!”
「ミカエル!! もっと攻めろ!! そんなんじゃ一生倒せないぞ!! 距離を詰めて懐に入りこめ!!」
「グウッ!! はいっ!!」
僕は今、グレイ・ドラゴンと戦っていた……修行の仕上げだと彼女……“ゾフィー・クラディス”は言った。
“『オマエの成長速度は少し異常だな……飲み込みが早いというレベルでは無いぞ?』”
彼女からみて僕は“異常“らしい……なんでも成長速度が飛び抜けているのだとか。
この6ヶ月僕は彼女の修行を受けたが命懸けで生半可なものではなかった……。
格上のモンスターに挑んではボコボコにされ即座にポーションをかけられ倒せるまでそれの繰り返し……。
“グルルルァァア!!!”
「ハァッ!!」
ーーザク!!
”グル……グルルル……アァ……”
「ハァッ、ハァッ! やった……ゾフィーさん!! やりました!!」
やった……!!あのグレイ・ドラゴンを一人で……!!
「ミカエル! よくやった!! しかし、キングオーガにあれだけ苦戦していた半年前を考えると本当に成長したな……」
だが……とゾフィーさんは言葉を続けた。
「だが、この程度で苦戦するようではまだまだ私には追い付けないぞ?」
「はいッ! これからもっと頑張ってゾフィーさんを助けられるぐらい強くなります!」
「フッ……期待しているぞ」
ゾフィーさんはわしゃわしゃと僕の頭を乱暴に、でも優しく撫でてくる……僕はこれだけで辛い修行もモンスターとの戦いも怖くない……もっと頑張れる……! もっと強くなれる!!
「ミカエル、家に帰ったら話がある……」
「はい……」
一体何の話だろう? ゾフィーさんが少し悲しい顔をしていたような……。
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