第8話 捕えられたセラ

「お父様、こいつ魔女じゃないかしら」


椅子に縛り付けられたセラを、高そうなドレスを身にまとった少女がにらみ付け、大股で歩み寄る。


「見掛けない顔だし、ガキのくせにこんな黒薔薇の指輪なんか付けちゃって、生意気よ」


セラの指から指輪をむしり取った。


「どうかな、魔女は私達『教会の騎士』がほどこした法術で身動きが取れないはずだし、街にも入って来れないはずだからね」


その様子を眺めながら、首から十字架を下げた若い神父が穏やかにうなずいた。


「でも怪しいわ。

何より教会の中でも特別な立場にある我がネシュトス家に忍び込むなんて、あり得ないわよ。

ねぇお父様、こいつが魔女かどうか、『教会の騎士』候補生筆頭のあたしが、直々に確かめてみてもいいかしら?」


「あ、ぐっ!や、やめて……!」


ふいに少女に髪の毛を鷲掴わしづかみにされ、セラが声を上げるが、


「そうだな……」


静かに歩み寄ってきた神父は、愛娘まなむすめの頭を撫で、


「確かに今の御時世、疑わしきは疑うべきか。

だが、ほどほどにな。

ロッタは本当に仕事熱心だからねぇ」


と、セラに冷たい嘲笑ちょうしょうを送ると、部屋を出て行った。



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