第9話 魔女狩り

「さてと、この指輪はあたしがもらうわ。

ふふ、なかなか素敵ね」


指にはめた黒薔薇の輝きをセラの眼前に誇示こじした後、ロッタはドレスを脱いで黒い革の下着姿になると、セラの縛り付けられた椅子の背を引きずり、隣室へと入った。


「や、やめて、下さい……!

何を、するつもり……!」


「うるさいわね、魔女狩りに決まってんでしょ!?

どう?

あたしの仕事部屋。

素晴らしいでしょ」


厚い扉を固く閉ざし、窓も無い暗くせまい部屋には、天井から滑車で縄が吊るされ、鉄鍛冶てつかじなどに使うような金物や、鋭いトゲを幾つも備えた見たことも無い恐ろしげな器具がずらりと並んでいた。


「い、いや……!

あたし魔女なんかじゃない!

やめて下さい!

お願い、助けて!」


椅子を必死に揺らし縛られた手足をほどこうともがくセラが大声を上げるが、


「あはは!

誰にも聞こえやしないわよ!

聞こえた所で無駄だしね。

うちは魔女狩りの専門組織『教会の騎士』の筆頭名家なのよ?

魔女の叫び声なんかいくら聞こえた所で、誰が助けに来るもんですか!」


ロッタはどの器具を使おうかと順に手に取り品定めをしながら高笑った。


「そんな………。

勝手に入ったことは謝ります!

本当にごめんなさい!

でもあたし魔女なんかじゃない!

お願い!

信じて!」


「うるさいつってんのよ!

馬鹿な子ね、本当はあんたが魔女かどうかなんて関係無いのよ!

あたしはただ、あんたみたいなかわいい女の子をボロきれみたくなるまでなぶるのが好きなだけなの!」


長い鋼鉄の針がセラの太ももに振り下ろされた。


「あはは!

いい御時世にいいおうちに生まれたものだわ!

正々堂々とあたしの欲求が満たせるのだもの!」


泣き叫ぶセラに恍惚こうこつとした笑みを浮かべると、ロッタは縄の先に結び付けられた大きな金属のフックを手に、セラの背後へと回り込んだ。


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