第3話 ヴィミルお姉様のお願い

ヴィミルも両親も本当に優しく、塔の暮らしは質素で窮屈きゅうくつではあったが、やがて少しずつセラは元気を取り戻し、幸せな日々を過ごした。


「セラ、あなたは私の大事な妹。

これをあげるわ。

私とおそろいよ、本当の姉妹だって、証」


ある日ヴィミルがセラに差し出したのは、ヴィミルの指にはめられているものと同じ、薔薇をかたどった黒い指輪だった。


「ペアリングだなんて、素敵……!

ありがとう、お姉様!」


右手の薬指に指輪をはめて天にかざしはしゃぐセラを、ヴィミルはしばし愛おしげに眺めていたが、しかしふと伏し目がちになり、


「それでね……。

少しおかしなお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」


セラの顔をのぞき込んだ。


「うん、何でも言って!

お姉様の言う事ならなんでも聞くよ」


「そう、ありがとう。

あのね、その指輪は普段は外して、この革紐かわひもで首から下げるとかしてて欲しいのよ。

で、指輪を付ける時は、なんていうかね、どんなに小さくてもいいの。

いたずら、そう、少しだけでも、人が困っちゃうような事をして欲しいの」


「えぇ!?

どうして?

そんなの……」


「人のお庭に小石を放り込むとか、そのぐらいでもいいのよ。

なんていうかな、ちょっとしたおまじないなの。

お願い、二人だけの秘密のおまじないよ」


ヴィミルは片目をつぶってみせた。


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