第11話

それ故、今まではモニカに何か言われる度に落ち込んでいたセシリアだったが、今ではそんなものどこ吹く風とでも言うかのようにスルー出来るくらいには成長していた。

しかし、モニカからしてみればそれは面白くないのだろう。彼女はどんどん一人でヒートアップして行った。



「大した顔してる訳じゃないんだから無理しなくても良いのよ?あんたなんてどうせいつもの様に壁の花になってるだけなんだろうし。いつも通りわたしの引き立て役になってれば良いのよ!」


だんだん彼女の声が大きくなってくる。モニカは煌びやかな格好をして尚それに負けないくらいには美しかったのでちらちらと伺う視線はあったのだが、それとは違う意味で少しずつだが、会場の視線が集まり出す。

セシリアが悔しそうな顔をするのが見たかったモニカは、そちらに夢中になってしまい、周りの様子など目に入っていない。

何を言っても彼女の望むような反応を返さないセシリアにとうとう痺れを切らしたモニカは大きな声で喚き出した。



「何よ!ちょっとあんた、私の話聞いてるの!?今日何の為にあんたを呼んだと思ってるの!?私は例の彼を落としたいんだから私が目立つ様な格好しなさいよ!なんでそんな綺麗な格好してんの!?貧乏人は貧乏人らしくしてれば良いのよ!!!」


それを聞いて青ざめ出したのは周りで様子を伺っていた人達だった。外国に居たモニカは知らなかった事であろうが、多くの人からはフレデリックは恐怖の対象なのだ。その彼が溺愛している妻がいるというのは本人達が思っている以上に有名な話だったのだ。

セシリアが有名になったのは彼と結婚してからなのでここ1年程度。気弱な昔の彼女を知らない人からすれば、モニカの侮辱を聞き流す彼女が何を考えているかなど全くわからず、この後何が起きるのかただただ恐ろしいだけだった。

それが無くても辺境伯夫人であるセシリアは一介の子爵令嬢でしかないモニカよりずっと身分が上なのだ。そんな彼女に高圧的な物言いをするモニカは周りからすると頭のおかしい人としか映らなかった。


しかし、夜会に出席する度引く手数多であったモニカはここでやっと誰からも声がかからない事を不思議に思い始めた。試しに数人の男に妖艶な笑顔を向けるも、皆一様に引き攣った顔をしてそそくさとその場を離れてしまう。

こんな屈辱は初めてだった。

そうしてそのやり場のない怒りはまたセシリアへの暴言として姿を現すのであった。

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