第7話
「フレディ。相変わらず顔の治安が悪くなってるよ。」
「?……あぁ、すまない。職業病かな。」
獲物に狙いを定めたかのようなフレデリックの表情にマスターは苦笑いを浮かべる。
フレデリックはサヴィン辺境伯家の次期当主だ。
辺境と聞くと寂れた街を想像するかも知れないが、国境に面している為国防の要であり、人口も多く、王都程ではなくともそれなりに活気のある大きな街を有する豊かな領地だ。
隣国との小競り合いや国境付近の山に潜む山賊たちの相手をする為、サヴィン辺境伯家率いる騎士団は王家の有する近衛兵団と並ぶほどの練度だ。
実地慣れしている分騎士団の方が動けるかもしれない。そんな環境で育ったフレデリックは無意識下でとんでもない威圧感を放つことがある。
そして、特徴的な彼の赤い目。
これはサヴィン辺境伯家に連なる者に現れる特徴のひとつであった。
――人を沢山殺すから。血の色、不吉な色――
呪われた一族。
そんな事を言われる事も多々あった。
それを。
(レッドベルベット……ねぇ……。)
特に大した考えも無く発せられたであろう何の邪気も無く真っ直ぐに向けられた言葉は不思議と彼の心を軽くした。
ただ、それはきっと彼の事を詳しく知らないから。
彼の身分を知った時、あの輝いていた瞳が恐怖や嫌悪で塗り潰されるのはどこか惜しいようにも感じた。
だがまぁ、取り敢えずは明日もう一度彼女に会える。それが彼の心を浮き立たせていた。
そんな彼をマスターが微笑ましげに眺めていた事に彼が気付く事は無かった。
「…………、……ル、セシル!」
完全に思考の海に落ちていたセシリアが名前を呼ばれてはっと気付くと、目の前でフレデリックが心配そうにこちらを覗き込んでいた。
「大丈夫?」
「うん、ごめんね?……今私達が頼んだもの偶然だけど出会った時に言ってたお互いの色だな~って思って。」
「あ、確かに。……へぇ?そんな事考えてたんだ。セシル可愛い。」
フレデリックがにやりと悪戯っぽく笑うとセシリアは恥ずかしそうに顔を染めながらケーキをつつき始めた。
暫く雑談をしながら食べていると、突然セシリアのケーキを食べる手がはたと止まった。
やはりどこか体調でも悪いのかと懸念していると、彼女から声がかかった。
「……ねぇフレディ。一昨日外出歩いたりした?」
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