第5話
「……え?……えっと?」
「うん?あぁ、僕はフレデリック。よろしくね。」
「あ、はい……?」
そうだけどそうじゃない。
気になったのはそっちじゃない。
語尾が若干上がっちゃった気がするけどこれは仕方ない……と思う。
一緒って言った?
自分で言うのもなんだけど結構今すごい量食べてると思うんだけど……。
そんな事をぐるぐると考えていたセシリアは、すっかり自分の世界に入り込んでしまっていたようで、はっと気付くと、目の前の男性――フレデリックがじぃ……とこちらを見つめていた。
「……えっと?」
「あ、やっと気づいた。ね、君の名前も教えて?」
あぁ、そういう事か。
あまりの衝撃と混乱に、自己紹介を無視した形になってしまっていたのだ。
どことなく気まずさを感じながら彼に答える。
「初めまして。セシリアと申します。」
「セシリアね……セシルって呼んでいい?あ、僕の事もフレディでいいよ。」
「はぁ……どうぞ。」
怒涛の勢いに気の抜けた返事をしてしまう。
何とも押しが強い人だ。
そんなやり取りをしているうちにスイーツとミルクティーが用意できたようだ。マスターから声がかかった。
「はい、用意出来たよ。」
「おっ、今日も美味しそうだ。いただきます♪」
「ははっ、良いねぇ、2人とも美味しそうに食べてくれるから俺も嬉しいよ。」
「?フレディさんもよくここに来られるんですか?」
どことなくマスターとの距離が近かった事に疑問を覚えたセシリアはそう聞いてみた。彼女はよくこの店に来る為、常連客はほぼ顔見知りである。その中に彼は居なかったと思っていたのだが……。
「あー、僕、普段王都に居ないんだよねぇ……。セシルちゃんは学生?それ、制服だよね。」
「あ、はい。すぐそこの学園に。」
「あぁ、僕もそこの卒業生だよ。そこに通ってた時にここの事を知ったんだよね~。」
なるほど、そういう事なら納得だ。
それにしても自分とそう変わらない歳の時にここを見つけるなんてやりよるな、お主。
ん?でも、学園の卒業生って事は貴族?にしてはノリ軽すぎない?
そんなセシルの思考を見透かしたようにマスターから声がかかった。
「いや~セシルちゃん、こいつ本当のスイーツ馬鹿でさ。学生の時にここに来る頻度も君といい勝負だったし。だから、スイーツを前にすると脳みその容積の99%をそっちに持ってかれるんだよね……。これでも普段はもっとビシッとしてるんだよ?」
酷い言われ様である。
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