第4話

翌日、目立ちすぎない程度におめかししたセシリアは、フレデリックと共に王都の一角にある小さなカフェを訪れていた。

こぢんまりとしたそのカフェは、メインの通りから1本入った小道にあり、隠れた名店といった毛色の店だ。常連客が多く、雰囲気がとても良い場所だ。2人は気持ちの良い風が通るテラス席に案内された。


2人はメニューと暫く睨めっこした後、アフタヌーンティーセットを2人前に、セシリアはレッドベルベットのケーキとコーヒー、フレデリックはチョコレートケーキとミルクティーを追加で注文した。

2人ともここに来るのが楽しみなあまり、朝食を控えめにしておいたのだ。健在の時刻は正午前後。いい塩梅に空腹の限界が近付いていた。


程なくして運ばれてきたものに目を輝かせた2人は甘いスイーツに甘いミルクティーやココアを平気で飲める程の大の甘党だった。

いそいそと食べ始めたセシリアは、向かいで早くもアフタヌーンティーセットの3段目にさしかかろうとしているフレデリックを見つめながら昔のことを思い出していた。





その日はモニカの留学が決定した日だった。

あまりの嬉しさに、セシリアは行きつけのカフェで1人祝杯(ケーキで、だが)をあげようとしていた。

いつもは自重するのだが、その日はあまりの嬉しさにストッパーが外れた様な状態になっていたのだ。

カウンター席に座り、大量のスイーツを目を輝かせて次々と平らげていくセシリアを、見慣れたマスターは微笑ましげに眺めていた。



「……っ。ふふっ……。」


どこからか押し殺した笑い声が。

いつもはこの時間に自分以外の客は居なかったことから油断していたのだろう。

思わず声のした方を見てみると、カウンター席の反対側の端に1人の男性が座っていた。


羞恥心から真っ赤になってしまったセシリアに、男性が話し掛けてきた。



「失礼。……あまりにも気持ちのいい食べっぷりだったので。隣に座っても?」

「……どうぞ。」


最早今更取り繕うのも面倒だ。

セシリアは開き直って目の前のスイーツに集中する事にした。

しかし、続いた男性の言葉に再び手が止まる事となる。



「マスター、僕にも彼女と同じものを。あぁ、でも飲み物はミルクティーがいいな。そう、甘いヤツ。」

「は……?」

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