第3話

王都の別邸に帰宅したセシリアは、優しく出迎えてくれた夫、フレデリックと共に夕食を摂っていた。早くパーティーの件を打ち明けなければと思いながらも中々言い出せずにいた。


フレデリックはシェフの作る美味しい料理に舌鼓をうちつつ、妻の様子が少しおかしいことに気付いていた。大方今日のお茶会が原因だろう。幼なじみとあまり関係が良くない事は聞いていた。

少しずつ泣きそうになってくるセシリアに、彼は優しく問うてみた。



「セシル、どうした?何かあったのかい?」

「あ……えっと……」

「ゆっくりでいいよ、言ってごらん?」


夫に気を遣わせてしまったことに申し訳なさを覚えつつ、セシリアは今日のお茶会であった事――週末のパーティーに一緒に出られなくなったしまったことを切り出した。一緒に出る事を楽しみにしていたばかりに、今になって込み上げてくるものがあったのだ。

こんな所で昔からの諦め癖が悪い方向に働いてしまうなんて……。



「折角王都まで来たのに……ごめんなさい。」


小さく言って俯いてしまったセシリアに、何かを考えていたフレデリックが声を掛ける。



「セシルは悪くないよ。それが小さい頃からの経験で身に付けた君の処世術なんだろう?それに、まだ諦めなくてもいいんじゃない?」


そう言って笑ったフレデリックに顔を上げたセシリアはどういう事かと首を傾げる。


曰く、やむを得ない状況でフレデリックが遅れてしまった事にする、との事だ。

彼は、小競り合いの多い国境を有する領地を治める辺境伯だ。サヴィン辺境伯家と言えば、帝国の盾とすら言われる程の有名だ。その当主である彼に領地でほんの少しの問題が起こって遅れたなどと言われて誰が文句を言う事が出来ようか。



「ん~、それでも気になるって言うなら……お詫びにスイーツ食べに行くの付き合って?」


セシリアとフレデリックは夫婦揃って大の甘党だったのだ。2人が出逢って仲を深める要因となったのも、スイーツだった。


特に用事がある訳でもなかった為、翌日、2人が出逢った店でデートをする事となった。

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