第2話

「あ、うん、そう。えっとね、」

「あ~、いいよいいよ、別にそんな興味無いし。どうせ大した相手じゃないでしょ?男爵家か、良くて同等の子爵家くらい?まぁ、あんたには丁度いいんじゃない?」


話を振られたセシリアが答えようとするとこの態度だ。最早早々に切り上げて解放されたいセシリアは腹を立てることすら面倒に感じ、思考を放棄している。ただモニカが満足するまで時間が過ぎるのを待つのみだ。これが一番波風立てることなく穏便に済む。昔この事に気が付いてからは全く同じ対応を続けている。仏のような微笑みを浮かべて聞き流している間にもモニカは滔々と語り続けていた。



「――――――でね、私どうっしてもあの方にもう一度会いたいの!今週末、パーティーあるじゃない?そこに現れると思うのよね!一緒に行きましょ?ね?」

「あ――、そのパーティーは夫と一緒に行くことになってて――――いいわ、都合つけとく。」


今週末開催されるパーティーは王家主催で毎年開催される盛大なものだ。貴族達は、このパーティーの為に地方に住む者も殆ど全員が王都に集まる。

セシリアと彼女の夫もその為に王都まで来ていた。

パートナーとして一緒に出席する予定だった二人だが、後で謝らなければならない。まさか断られるなんて夢にも思っていないモニカが物凄い形相をしていた為、受け入れざるを得なかったのだ。


セシリアに了承させたモニカは小さく満足気に笑うと、その後もパーティーにはどんなドレスを着ていこうか、どんな靴を履いて、どんな髪型でどんなアクセサリーをつけて行こうか。愛しの彼に会えたらどんな風にアプローチするのか等をこんこんと語り続けた。


恋する乙女の恋バナを聞くのは楽しいものだ。――基本は。だが、彼女のそれは恋バナなどという可愛らしいものでは無かった。もし恋人がいたらその相手をどうやって消そうか、いっその事薬でも盛ってしまおうか……等々。


顔を引き攣らせながらもやっとの思いで笑顔を保ち、当日は絶対に彼女から目を離さないようにしようと心に誓ったセシリアだった。


結局その後も、留学中の自慢話やら何やらを聞かされ続け、やっとの思いで解放された時には既に日が傾き始めていたのだった。

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