第11話
「コウくーん!!!!よくもアサヒちゃんをフってくれたねー!!女の子を捨てるなんて許されるわけないよねー!?」
「大丈夫だよー!私はコウ君を殺すつもりはないからサー!!!!」
「瀕死の状態でアサヒちゃんにとどめを刺してもらうからねー!!!」
「うそうそうそうそ!!!!!え?え?え?え?なんで!?なんで?!」
「え?じゃあ隣のおっさんはアサヒの父さんかよ!!嘘だろ!!」
「ってそれよりアサヒをフったってどういうことですか!!!全く身に覚えがないしそもそもアサヒとずっとあってないんですけど!!!!」
「とぼけたって無駄だよー?アサヒちゃんが目を腫らしてかえって来たんだからねー!コウ君にフラれたってね!!」
「え?え?ってか力強すぎる!!助けて!!!誰か!!!ほんとに女の人かよ!なんて力してやがる!!ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「ちょ…旦那さん!旦那さん助けて!奥さんに殺されちゃうよー!!!」
「さっきから一部始終を見てるぞ」
「うあああああああこのおっさんもイカレてんのかァー!!!」
「死ぬぅぅぅぅううあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「っは!そうだ!おっさん!止めないとさっきの看護師さんのこと言うぞ!!!」
「俺はコイツの口を押える、早くナイフを振り下ろしてしまえ」
「あああああああああああああ口封じされるううううううううううううううううううううう!!!!!!!」
「…看護師?」
ピタッ…
「ちょっと話を聞かせてもらえるかなー?」
「よっしゃああああああああああ何とか生き延びたァーああああ」
「それが最適な選択だ、アサヒにとってな」
「うーん本当?ならいいや!」
「え?え?え?え?え?え?え?なんで?」
「なんでそれで許されるの?え?なんかさっきと比べてナイフのどに近くなってない?あれ?」
「奥さん!旦那さん看護師さんナンパしまくってましたよ!」
「うーん…いくらアサヒちゃんのためって言っても私以外の女に甘い言葉をかけたのー?」
「それはいやだなー…あなた!入院期間が伸びちゃうかもしれないけどバツだからねー?」
「ねえ!さっきから何なのその会話!俺の周波数が違うの!?どうなってんの?ニュータイプ?!」
「そりゃあ長い年月共にしてないわよー…ね!あなた!」
「学生時代は俺のことを信じてくれてなかったがな」
「人の上でナイフのせめぎ合いしながら惚気てんじゃねぇええええええ」
目前に迫る死を受けコウの中で走馬灯のようにアサヒの姿が思い浮かぶ。自分にこうして降りかかっている仕打ちを思うと自責と後悔がこみ上げてきた。
もう…腕に力が…片手しか使えないっつーのはこんなに心細いのか…アサヒがいないよりゃマシだってか…
あー…これは死ぬかもな…会いたかったな…アサヒに会いたかった…でもこうやって親に命を狙われるくらい恨まれてるってことだよな…もう…これを甘んじて受け入れるか…まあそのくらいのことをしてきたってことだからな
それに考えてみたら悪いことばかりじゃねぇ、俺のとどめを刺すのはアサヒって言ってたな、少し…だいぶ痛いだろうけどアサヒに会える…もうそれだけでいいや。
最後にアサヒにかかった…俺のかけてしまった呪いを解かないとな、これからのアサヒの人生のためにも。
アサヒ…悪かったな…本当に…俺がいなくなったら、俺のことを忘れて幸せになってくれ…
涙の滲んだ目にはもうハイライトは残っていなかった、コウも腹をくくったのだろう。
「アサヒのお母さん…アサヒに本当に…申し訳ないことをしてしまった、俺のことはもう忘れて自分の人生を歩んでくれって伝えてください…」
「ふふふー…覚悟が決まったみたいだねー…それじゃ目を閉じてねー」
「えいっ♪」
グサッ!!!
純白のシーツには異質なものを拒むように仰々しく血の赤色が目立っていた。
「うそ…だろ…おまえ…」
「俺はこの小僧を試してるだけかと思ってた…」
ボタボタボタ…
「まさか本気だったとは思わなかったぞ…これだから…メンヘラは…」
「…え?う、嘘…でしょ?」
「そんな…あなたは試してただけだったの!?私はてっきりあなたが止めないからやっていいんだと…」
「あなたの判断はいつだって正しかった!わたしが今まで信じてあげられなかった分もこれから信じることにしてた!それが最善の道だと信じて!そして本当に全部正しい道だったじゃない!」
「だから私は…あなたを信じて…ほ、ほら!さっきも早くやれって…」
「本当に刺す奴があるか…とんだ検討違いだった、そこまでタガが外れていらっしゃるとはな」
「嫌…嫌よ…あなた!これで私のこと嫌いにならないで!!そ、そうだ!わたしがやったみたいにわたしの事をナイフで刺すってのはどう?そ、そしたら許してくれる?」
「落ち着け…どうなるかはわからんがとりあえずナースコールするしか…」
「フフ…それでね…あなたから付けられた傷を見るたびにあなたを思い出すの!つまりこれからの人生であなたのことを忘れる時間をもっともっと少なくできるんだよ!」
「おまえ落ち着け…」
「あああ!!!!そうよ!あなたのことを忘れる時間なんて少しでもあっちゃいけないんだ!あなた!こんな愛の足りてない女に罰を与えて!これと併せて思い切りきついような罰を!!じゃないとわたしは自分を許せないの!」
「って…あはは…そっか…そうよね」
「あなたからのお仕置きなんてなんでもご褒美になっちゃうか~うひひひ…ど、どんな事…されちゃうのかしら~」
「お前ちょっとは黙ってろ!!!」
「ナースコールか流血してる旨を誰かに伝えてこい!!!このサイコ野郎!」
迫りくる自分のカルマと刃の前で悟りを開いたコウが目を開いた。
「アサヒの…あのメンヘラ思想は明らかに親譲りですね…」
「ああ…冗談を言えるくらいで安心したよ!クソガキ!」
アサヒは決心しコウの病室の前まで来たはいいものの
最後の一歩を踏み出せずにいた。
彼との決着を自分との決着をつけなくてはいけないと、わかっている、わかっているが今から嫌われに拒絶されに行かなくてはいけない。
それも彼の彼女としての人生で代わりを見つけられないほどに心から愛しすべてをささげた男にだ。
だがそんな彼もついには整理できたようだ。
もう…ここまで来たんだから、一言謝ろう…
あんなにいい人が私なんかに構って人生を無駄にするなんてことはあっちゃいけないことなんだ
一目あって思いを伝えて…彼に最後に嫌われて終わろう
別れる理由も聞かなくちゃね…これから彼にさんざん言われるのかな…でも仕方ないことなんだよね…これ以上彼を困らせるわけにいかないし甘んじて受け入れよう
さ、そろそろいこっか…
「いそげいそげ!!!」
「くそ!!病院の中で流血沙汰起こしやがって!!!」
「大変なことになりましたね!」
扉に伸びかけていた手がひっこみ彼の病室に雪崩れ込む先生たちを見守る。
なにか…あったの?
もしかして…コウ君?
コウ君の身に何かあったの!?
「ほら!!!はやくしろ!!」
医師の呼びかけが自分のことを読んでいるのだと確信した彼女は先ほどまで心の中にため込んだ不安も躊躇もなくなり一目散に病室へと駆け込んだ。
コウ…君?
そんな…なんで?
コウのベットに付着した血を見て一瞬気を失いそうになるも瞳孔の開ききった目にワンテンポ遅れてアサヒの両親の姿があった。
え…?おとーさん…?おかーさん?
なんで…どうなってるの?
どうして…
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