第5話


「いててて…頭がカチ割れそうだ…」

聞きなれない目覚ましの音で目を覚ましたが…俺の部屋ってこんなにピンク色してたっけな…

それに…なんで俺はこんなベットと壁との距離が近いんだ…?まるで…となりに寝ていた誰かに気を使っていたみたいに…

「お目覚めかな?はいコーヒーだよ」

見たことがないベットに…見たことのない間取り…

最後の記憶は…酒を飲む前…

アサヒが朝の飲み物を準備している…かわいいな…

「ありが…とう…でも俺コーヒー飲めない…」

「知ってるよ、ほらミルク入れてあげるねー」

「あぁ…ありがとよ…ここはアサヒの家か?初めて来たけど、まんま女の子の部屋って感じだな…って何してんだコラ!!」

シコシコシコシコシコシコ「んえ?…ほら、朝いちばん搾りたてのミルクだよ…んぅ…で、でるぅ///!」

コポ…コポ…コポ…

「ほら♡…のんで♡?」

「…」

「あっ!窓から全部捨てやがった!なんてことするの!」

「私は子種をコウ君に飲んでもらうために産んだのに!」

「わざわざ俺をアサヒの家にまで引きずり込んですることがこれか!?この変態野郎!」

「違うよ!昨日コウ君が泥酔して路上で意識を失ったから保護したの!!」

「流石に私ひとりじゃコウ君をお持ち帰りできないから車のお迎えをお願いしたけどね」

「そう…だったのか、ずいぶんお世話になったみたいだな…」

「ホントだよ!昨日のコウ君ほんとに酷かったんだからね!私がどれだけ苦労したことか!」


なるほど、本当に迷惑をかけてたみたいだなー…それじゃあ精子コーヒーくらい飲んでやればよかったか…?

でも流石にコーヒーと一緒に飲みたくないもんな、それにアサヒのミルクって言ったって甘くはないから実質…変な味と匂いがするブラックコーヒーだもんな。

うーん…そんなに親身に俺を思って助けてくれたと思ったら…俺もイチャイチャしたくなったな、キスしたくなってきた。


「アサヒ…」

「なんじゃい」

「本当に…ありがとうな!」

「…んう」

「…キスしようぜ?」

(イヤ!!!!)

「ほら!早く準備して!学校遅れちゃうからさ!」

「大丈夫だよ!制服は昨日私が持ってきたから!」

「さっきまでコーヒー飲めるくらい時間は余裕だったじゃないか、それならキスくらい…」

「ってかなんで俺の制服持ってんだよ!」

「そんなこといいじゃん!ほら!早く着替えて!今着てる服は洗濯機にはいれないでこのビニール袋に入れてちゃんと密封してね!!」

「洗濯くらい自分の家でやるからいいよ…ちょっと寝起きで立ち眩みが酷いから手を取ってくれない?」

「もう…ほらほら!ごはん食べるよ!お母さん待ってるよ!ほら!よいしょっと…」

「おお…ありがとな…隙あり!」

あー…クソ柔らかい…唇ぷるんぷるんだぁ…!なんだかキス嫌がってたみたいだけど…まあアサヒのことだから喜ぶだろ

「う、ウボァーーーー!!!」

「え?」

「チクショぉ!!床とキスしちまったぁ!!!!」

「え?」

「きったねぇえぇ!!!!」


「ち、ちがうの!コウ君とのキスが嫌だったとかじゃなくて!コウ君が汚いってわけじゃないから!!!」

「…」

「ほら!私の部屋の隅で体操すわりなんてわかりやすい落ち込みかたしないで!!!!」

「き、汚い…そうだよな…俺にこんなかわいい彼女ができるわけないもんな…俺がうぬぼれてたんだ…」

「コウ君ー!!ち、違うの…これは…」

「…」

(ど、どうしよう…本当のことを言っても傷つくだろうし…でもこのままの方が悲しいだろうし…)

「どうせ…俺のことを好きでいてくれる人間なんていないんだろうな…そりゃそうか…俺なんていいところなんて微塵もないし…」

「…コウ君!!!いくらコウ君でもコウ君のことを悪く言うのは許さないよ!!」

「もう怒った!!!本当のこと言っちゃう!!」

「コウ君!!!!君は昨日酔っぱらった勢いで車道を私だと思ってずーーーーーーっと舐めてたの!!!」

「そ…そんな…」

「私もコウ君が知ったら嫌な気持ちになるかなって思って言わないでおこうとしたんだよ!」

「そんな…俺は…床とアサヒの区別もつかないなんて…」

「…コウ君」

「そう言えばそうじゃん!いつも私のことかわいいかわいいって言うくせに!道路と間違えやがって!!」

「ほら!はやく食べよ!!私は口洗いたいし!」

二階のアサヒの部屋からリビングに降りる階段をふらふらと危うい足取りで降りる。

階段にはインテリアが飾ってありその中の家族写真が目に留まった。

これは…アサヒの父さんか…顔が似てない、きっと橋の下で拾ったんだろうな。


アサヒにぴったり付いていき部屋に入ると先ほどの家族写真で見た胸の大きな人妻がエプロン姿にお玉という標準装備で出迎えていた。

「わぁー…キミがコウ君だねー?」

「ささ!ごはんできてるから食べててー!」

「うわー、至れり尽くせりで…ありがとうございます!」

アサヒと共に席に着き、朝飯をつつく。

ん?なんだかこの食パンに塗ってあるジャム…やたらと糸を引いて伸びがいいな、チーズでも入ってるのか?

…なんかアサヒがにやにやしてる…かわいいな

そういえば…アサヒの母さんに昨日は世話になったんだったな。


「アサヒの…母さん…昨日はずいぶんとご迷惑かけたようで…申し訳ありません…」

「いえいえ~いつもアサヒがお世話になっております~」

「いえいえこちらこそ…」

「アサヒちゃんが何か迷惑かけてない~?」

「最近やたら体液を口にするものに混ぜるようになったことくらいですね」

「うふふ~血は争えないねー」

「え?」

「私が若い時からしてる手だよ~それで、飲んであげたのー?」

「僕コーヒー飲めないので飲みませんでした」

「そっか~それは残念だねー」

「次からはもっと考えないとねー、それにコーヒーだと温度が高すぎて自分の成分が死んじゃうからねー」

「わー!流石お母さん!お父さんにずっと摂取させてたの?」

「そうだよー、お父さんとは幼馴染でずーーーーっと小さい時から私と一心同体にしてあげてたんだよー!」

「アサヒの母さん、こんなに迷惑ばかりかけてなんですが、なるべく僕はこの空間にいたくありません」

「…?これから親戚になるんじゃないのー?」

「アサヒからキミのお話をよく聞くよー?アサヒはキミのこと大好きみたいだしー」

「キミは…アサヒのことが嫌い?」

「そ、そりゃ…僕だってアサヒが大好きですけど…」

「それじゃあ決まりだねー」

「もう!お母さんってば!気が早いよ!!」

「うふふ…そうかしら~?そうだ!アサヒちゃんがキミの分までお弁当作ったんだよー!よかったら食べてくれないー?」

「そ、そりゃあアサヒの手料理なんて食べれるならいくらでも食べたいですよ」

「よかったー!アサヒったら早起きして作ってたんだからー!ぜひ食べてあげてねー」

「私お弁当持ってくるね!ついでにコウ君の制服も!」

「…体液入ってるんだろうなぁ」

「でもさっきのパンは黙って食べてくれたでしょ!」

「は?パン?」

「うん!わからなかった?ならこの方法はこれからも使えるね!」

「もう嫌だこの娘」

「それじゃあ待っててね!」

「はいはい…ありがとな、おれのために早起きしてくれたみたいで」

「気にしないで!私も楽しかったからね!」


彼女の親と二人きり…気まずいなぁー

てかこんなのもう面接だな。

「…キミはアサヒちゃんのこと…ほんとに好き?」

「そりゃ大好きですよ、あんなにできた女はいないです」

「…アサヒちゃんが男の子ってことはちゃんと認識してる…よね…?」

「そりゃそうですよ、そのうえで言っているんです」

「僕は本人が何を言おうと周りに何を言われようともアサヒを女として見ています」

「僕はアサヒが大好きだからです、そんなものは障壁になんてなりませんよ」

「アサヒちゃんのこと…ちゃんと理解してくれる?」

「あいつが望むことをできることならすべてをかなえたいです」

「母さんは俺に姑として審査をしているんですか?」


のんびりとした口調と雰囲気を醸し出すアサヒの母親が糸目の隙間から見透かすように視線を送る。


「うふふ~ごめんなさいね、そりゃあ心配なのよ~」

「あの子は今まで性別のことでたくさん傷ついてきたからね~」

「ちゃんとアサヒちゃんのことを理解してくれているのか確認したいの」

「私としては…アサヒちゃんを女としか見てないって言うのが…あの子がどう思うのかって考えたらねー」

「あいつの性別なんてものは正直僕からしたらどっちだっていいです。あいつの性別に惚れたのではなくあいつの外見と性格とえっちな体に惚れたんです」

「わー、よく生みの親の前でそんなことが言えるねー」

「あんなかわいい人間を作った生産者にレビューをしただけです」

「うわーん…こわいよぉー…ほんとにアサヒちゃんはキミのこと好きなのー?親戚になって欲しくないよー…」

バタン!!

「おまたせ!本当は返したくないけど…コウ君の制服だよ!」

「おお、ありがとな、流石にアサヒの制服着て学校はいけないからな、アサヒがくすねてくれて助かったな」

「コウ君は本当にずっと制服を着てるからいい匂いがするんだ!だけど流石に制服みたいな高価なものをもらうわけにはいかないからたまーーーーに借りてね…むほほ♡」

「なるほどな!こんなに良くしてもらって悪いな!俺の家出禁な」

「ぜんねん!もう合鍵つくっちゃいました!」

「アサヒちゃん!そればらしちゃったら鍵穴かえられちゃうよ!」

「母さんは俺が親戚になることを嫌がりましたがおそらく僕の方が嫌だと思っています、鍵穴の工費は母さん持ちでいいですね?」

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