第9話
「なるほど、これじゃ悪魔になった気分だぜ」
自嘲気味に呟くしかなかった。
いくらゲームのキャラクターとはいえ、俺のせいで二人も死なせてしまったのだ。ようやく「神にも悪魔にもなれる」の意味がわかったような気がする。
もう二度と悪魔にはなりたくない。今度こそ俺は、この『高校生メーカー [Ver. N]』を封印することに決めた。
本当は手放してしまいたかったが、最初に買った中古ゲーム屋まで売りに行ったら、もうあの店自体がなくなっていたのだ。他の店へ持ち込んだところ「こんなゲーム知らない」と買取拒否。よほどマイナーなゲームなのだろう。
ゲームなんて忘れて現実に目を向ければ、既に俺は大学を卒業していた。ただし留年の影響は大きく、就職活動には失敗。
主にコンビニと食品工場で働き、時々は単発のバイトも入れる。そんな感じのフリーターになっていた。
そして『高校生メーカー』から足を洗って一ヶ月が過ぎた頃、高校時代の友人から久しぶりに電話がかかってくる。用件は同窓会の誘いだった。
俺がストレートで大学を卒業して、そのまま東京の会社に就職したと彼は思っているらしい。いや彼だけでなく、地元の知り合いの間では、そういう認識になっているのだろう。
そんな状況では、昔の友人たちとも顔を合わせづらい。たから適当に誤魔化しつつ、やんわりと断ることにした。
「いやあ、色々と忙しくて……。行きたいけど、たぶん参加できないなあ」
「そうか……。残念だけど仕方ないな。そもそも、こんな時期に同窓会なんて不謹慎だ、って話もあるし……。中止になるかもな」
そこで電話を切っても良かったのだが、彼の「こんな時期に同窓会なんて不謹慎」という言葉が妙に気になった。
「ん……? そっちで何かあったのか?」
「ああ、お前はずっと戻ってないから知らないのか。俺たちの高校で最近、自殺者が続出してさ。ちょうど先月も一人、二年生の男子が亡くなったばかりでね」
電話の
すると、確かに永多岐市中央高校では、最近三年間で五人が自殺していた。五人全員が、五階の渡り廊下から飛び降りるという死に方だ。
「まさか、これって……!」
必死になって探すと、亡くなった生徒たちの名前にも辿り着く。
三人は初耳の名前だったが、残りの二人はよく知る人物たち。鈴木葵と遠藤達人だった。
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