第74話 弟vs国王
「いたぞ、オーラリアだ!!」
雑兵たちが、こちらに向かってくる。護衛たちがそれを引き受けてくれる。
公爵領のなかでも最精鋭部隊は、次々と敵を斬り捨てていった。
「オーラリア様をお守りしろ。こちらも敵の中央を突破する。狙うは国王の首のみ」
セバスチャンが号令を出すと、魔導士隊による攻撃が敵の中央で
「戦列歩兵戦法。たしかに、戦術の基本だが……もう時代遅れだ」
国王は20年戦争の時代からこの戦列歩兵戦法を得意としていた。
戦列歩兵戦法とは、士官の命令と太鼓の音を合図に、一列に兵隊たちが
だから、俺は留学先で得た知識をもとに国王がこの戦法を使ってくると予測して、後方の高台に魔力部隊を配置していた。これで、魔力攻撃の射程が伸びるうえに、接近されると弱い魔導士を守ることもできている。
「一気にケリをつける。俺に続け」
魔力部隊による援護によって、俺たちは敵の崩れた前線を安々と突破していく。戦列歩兵戦法は、規律と勇気によって支えられるものだ。その裏返しで、一度崩れてしまえば、立て直すことは難しく、組織的な行動を行うことが難しくなる。
俺たちは着々と王へと近づいていく。
「やらせはせんぞ!」
王の本陣へあと一歩と迫った時、ひとりの騎士がこちらに突撃してきた。
後方には国王の姿も見える。王の前にいる騎士は、近衛騎士団長そのひとだった。
長い青い髪。紅の瞳。身長と同じくらいの大きさを持つ長剣。
王国最強の騎士が、門番のように立ちふさがる。
「オーラリア様、ここは私が!」
セバスチャン執事長がそう言ってくれた。覚悟を固めた鋭い眼光。20年戦争で、父上の側近として、軍を率いた英雄の顔になっている。
「死ぬなよ、セバスチャン執事長」
「なに、若造に戦場の厳しさを教えてくるだけです。オーラリア様は、あの
老兵と最強の騎士はすぐに戦闘状態に突入する。老執事が作ってくれた時間を無駄にするわけにはいかない。
「国王覚悟!!」
そう叫んだ時、王は笑っていた。馬に乗りながらも、絶妙なバランス感覚で移動し、自分の愛剣でこちらの一刀を防ぐ。
「ずいぶんとなめられたものだな。私を殺すのに、この程度の人数とは」
「お前のお得意の戦法は、完全に旧式化している。もう勝ち目はない」
「問題ない。公爵軍の統率は、お前とセバスチャンに支えられているだけだ。ここでお前たちが死ねば、簡単に崩壊する」
こちらの最大の問題点をすでに見破られている。そして、国王の一撃一撃は強烈すぎる。馬上の不安定な状態にもかかわらず、しっかりと重心移動がおこなわれている。身体全体を使った重い一撃だ。
何度か攻撃を受け止めていたが、俺はついにバランスを崩し落馬した。
「
地面を転がるこちらに向かって、剣が振り下ろされる。
「オーラリア様!!」
アカネが俺の名前を叫び、
「邪魔をするな」
地面に降りたことで、さらに国王の攻撃は安定し
王が剣を振るうと、衝撃波が発生し、地面をえぐる。あのアカネすら、なすすべもなく吹き飛ばされてしまった。
これが最強の英雄の力か。
すでに護衛のほとんどは国王の力で戦闘不能にされていた。
俺は最後の力を振り絞って立ち上がった。
「無駄だ。ここまで来ることができたことだけは褒めてやる。だから、死ねっ!!」
なんとか剣で受け止める。しかし、その強烈な攻撃によって発生した衝撃波によって、ぼろ布のように吹き飛ばされる。
ダメだ。せめて兄さんが来るまで持ちこたえなくてはいけない。気持ちだけで立ち上がろうとするも身体が言うことを聞かない。ここまでか。国王の剣がこちらに向かってくるのを感じ取った。
意識が死へと向かう。
だが、その瞬間。国王の身体が吹き飛ばされていた。地面を
「国王だろうが誰であろうが、俺の弟に手を出す奴を許すわけにはいかない!!」
――――
次回の更新は3月18日土曜日です!
カクヨムコン中間選考無事に突破することができました。いつもありがとうございます( ;∀;)
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