第72話 天才vs英雄
―オーラリア視点―
俺たちは軍を
幸運なことに、王国軍は狭い場所に陣取っていった。大規模な軍事行動には不利な谷間。そこをつけば、数的な不利はある程度解消できる。むしろ、数が多いほど不利になるからだ。軍隊は、スピードが命だ。それにもかかわらず、大軍の動きが鈍る狭い場所に陣取っているのは、自殺行為。それは、
戦いの基本は、相手よりも多く数を動員することだ。
それができたら、数的な有利を最大限に生かさなくてはいけない。しかし、王国軍は、大義名分にこだわることで、その有利性を自ら放棄した。
この油断を最大限利用しなければ、大軍を相手になどできない。
「狙うは総大将の国王の首のみ。あとは無視しろ。国王のカリスマ性がなければ、イブグランド軍など
谷間の地形を利用して、森林に身を潜めて、敵の本体を奇襲する作戦は、うまくいった。敵の警戒網をかいくぐって、直接敵の本隊を強襲できたからだ。こういう乱戦になれば、数的な不利は問題にならない。あとは、早期決戦を完遂し、相手に立て直しの時間を与えなければ、勝ち筋は見えてくる。
逆に、こちらの敗北筋は、相手に陣形の再編成する時間を与えて、持久戦に持ち込まれた場合のみ。奇襲は完全に成功した。心理的な面では、こちらが完全に優位に立っている。いくら大軍でも、意表を突かれれば、ボロボロになる。大軍が少数の兵に負ける時は、奇襲が命取りになっている時が多い。
だから、俺はそれを利用した。
「うまくいきましたな、オーラリア様っ」
執事長が短く言葉を発する。
「油断するな。まだ、国王の首を取っていない。うまくいったかどうかは、国王をここで討ち取れるかどうかにかかっている!!」
少数の兵力では、勝つにはこれしかなかった。この作戦の最大のデメリットは、国王に逃げられた場合だ。こちらが戦火を切っているので、向こうは正当防衛という口実を与えることに他ならない。だからこそ、この場で勝利を決めるためには、王を討つしかほかに手段はない。
「正義は我にある! 腐敗し王族本来の立場を忘れた国王を逃がすなっ!!」
俺は大声で叫んだ。仮に、この場で王に逃げられたら、勝機は完全になくなる。
軍を再編成された場合は、数の暴力でこちらはなすすべなく敗れる運命にある。だから、この1回だけが最大のチャンスだ。
ある意味、
奇襲によって敵の前面を崩すことはできた、やはり、敵は寄せ集め。こういう奇襲への対処はままならない。あとは、国王を倒すだけ。
希望が見えたと思った瞬間。
いや、さすがはやはり歴史に名を遺す英雄ということだろうか。
「オーラリア様、敵の本隊がこちらに向かってきます。王国旗を掲げているので、おそらく国王率いる近衛騎士団だと思われます!!」
奇襲には奇襲を。こちらの意表を完全についた相手の行動。それはまさに王国最強の英雄の名にふさわしいものだった。
「なんだと!!」
「国王を中心とした精鋭がこちらに向かってきます。オーラリア様、このままでは食い破られてしまいますぞ」
少数精鋭の部隊が、こちらの本陣に向かってくる。狙いはやはり、俺の首か。
老いたとはいえ、さすがは20年戦争の英雄だ。雑兵レベルでは、どんなに数が多くても止めることはできない。
セバスチャンと目配せして、合図する。この場で、国王を止めることができる人間なんて俺たち以外にはいなかった。
「我に続けっ!!」
こちらも国王に向かって、動き始める。ここからは大将同士の決闘だ。
―――
ステータス
ハイランド=イブグランド(国王)
イブグランド王国の国王。
王太子時代には、病弱の父に代わって、20年戦争のイブグランド王国総司令となり、守護竜と共に、戦争を勝利に導いた。
戦争指導や個人の武力においては、天才と称され、軍神という異名を持っている。
それに加えて、側近や子供たちと言っても信用しない用心深さを持っている。ただし、子供たちをパワハラ同然に虐げるようなことにもなっていた。
老いてもなお、武術に優れ、近衛騎士団と情報局を用いて、国内を恐怖政治で統治している。
ただし、軍事面に比べて、政治面は不得意であり、その影響で国内に
(能力)左:現在/右:ポテンシャル
政治:45/48
武力:115/120
統率:120/120
魔力:20/20
知略:73/76
魅力:79
義理:20
(適正)
剣:S
騎:S
弓:S
魔:D
内政:C
外交:C
謀略:D
(特殊スキル)
・疾風(進軍速度up)
・軍神
・猪突猛進(部隊の攻撃力up&守備力低下)
――――
次回の更新は、3月14日火曜日を予定しています!
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