第44話 取り残された王女&公爵陣営vs情報局(NTR要素アリ)
―死の迷宮(ローザ視点)―
どうして、私はこんな暗闇にいるの?
誰か助けてっ。
私の叫びは誰にも届かなかった。この空間には、私しかいない。その事実が
本当にここは
そんなことは認められない。認めたくない。私は特権階級の人間なのよ。次期国王になるお兄様に愛されて、権力という力を持つはずだった私が……美しい女として、最高の時間を神から与えられるはずの私が……
ここで、ひとり寂しく、
「そんなことって……認められないわ。大丈夫、お兄様が助けてくれる、今は、この屈辱を耐えれば、あの反逆者には死よりも恐ろしい罰が与えられるはずよ。落ち着きなさい。ここで取り乱そうものなら王族失格。尊厳を……
必死に暗闇で自分を
恐怖によって眠れない。今までふかふかのベッドに眠っていたはずの私は、固く冷たい地面に寝転ぶことで死の雰囲気を
「やだ、死にたくないよ。助けて、お兄様……」
絶望の打撃音がフロアに
今では、どんな薬品よりも私を正気に戻してくれる。これがなければ、私はとっくの昔におかしくなっていたはずだ。
グレアは……お兄様によって、尊厳と婚約者を奪われて、ここで死ぬ運命だった臣下は……
こんな地獄で生き抜いてきたの?
彼の情けない評判を聞いた時、胸がすく感じがした。やっぱり、お兄様は王の器で、自慢の兄。グレアという次期公爵すらも、
太陽の魔石に
「やだ、死にたくない。お兄様に婚約者を寝取られたあんな情けない男に、私の高貴な運命が左右されるなんて認められないっ」
太陽の光を感じたことで、長い間、何も食べていないはずの私は、空腹を自覚させられた。グレアが用意していたポテトが、まるでご
さっきまで、嫌悪感しかなかったはずの、それは……王宮のご馳走すら上回る豪華なものに感じられる。
「だめよ、誘拐犯が用意した食料なんて、手を付けちゃダメ。食べてしまえば、もう取返しがつかなくなる」と言葉にはできていても、生物としての本能は生存を優先する。
生の芋を無意識で口に運ぶ。ガリッという鈍い音と、穀物特有の甘い味わいが広がる。贅沢な王宮生活では、吐き捨てていたはずの食料が、極上のものに感じられた。美味しい。ステーキや珍味を食べ飽きた私の舌には、空腹のスパイスが強烈に左右される。
父上や兄上が私に植え付けた王族として
そして、憎いグレアへのそこはかとない感謝を、心の中に感じてしまう。やだ。このままじゃ、兄上に対する気持ちが……
私の敬愛する気持ちが……
どんどん薄くなってしまう……
そして、食べ物を用意してくれた
少しずつ消えていく。
「なんで、助けてくれないのっ!! お兄様っ!!」
敬愛していたはずの兄への気持ちが少しずつ憎しみに変わっていく絶望が、私の心を満たしていった。
※
―王都(ナタリー視点)―
私たちは、王都の城門へと向かっていった。公爵様を監視していたはずの情報局員は、コウライさんが排除してくれているはず。あとは関所の監視員を実力を持って排除してでも、
王国への反逆を覚悟してでも、最愛の息子に会いたいと願うおじさまは、ずっと無言で部下たちにすべてを任せていた。すべてを賭けた状況において、セバスチャンさんやアカネさんを信じて、何も言わない覚悟は、私にも伝わってくる。
息子を助けるために、部下たちへの全幅の信頼を置いている。こんな状況で部下を信じ切っている公爵様の器の大きさを、私が尊敬の念を抱いてみていた。
センパイが皆を魅了していていたのは、やっぱり公爵様の背中を見ていたからなのね。
馬車を操っていたアカネさんは、「閣下、前方にあいつが……」と叫ぶ。
私たちは、荷台から身を乗り出す。
関所の前には、情報局のトップが不敵に笑って、立ち尽くしていた。
「バランド局長……」
――――
(作者)
読んでいただきたありがとうございます!
少しリアルのお仕事が繁忙期を迎えそうなので、今週~来週くらいまで更新頻度が乱れるかもしれません。その場合は、twitterや近況ノートでお伝えすることになると思いますので、ご了承ください。
引き続き楽しんでもらえると嬉しいですm(__)m
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