第28話 語り合う主従&堕ちていくソフィー(NTR要素アリ)

「ボールス、どうだ。ワインでも?」

 入り口で見張りをしてくれている騎士に語りかけると、少しだけ驚いたようにこちらを見た。


 変な時間に目が覚めて眠れなかった俺は、前に冒険者に地図とワインのボトルを交換してもらっていたのを思い出した。こんな地下ではワインは貴重品で、なかなか手に入らないから、大事にとっておいたんだ。不死のアンデッドは、食事を必要としない。それを理由にボールスは、俺たちの食料に一切手を付けない。ただ、聞くところによると、食事はできなくもないらしい。


「何十年ぶりの酒でしょうな? では、一杯だけいただきますか」

 いつもはかたくなに食事を受け取らない彼は、言葉を柔らかにして、ワインを受け取った。残念ながら、オシャレなグラスはないから、水筒に入れたものを俺たちは飲んでいった。


 久しぶりのワインは、香り豊かでとても苦かった。


「ふふ、舌がないから味はよくわかりませんが、生き返りますな」


「昔は酒豪だったんだろう?」


「そりゃあ、もう。こう見えても一流の冒険者でしたから」

 鉄仮面の中にワインを流していく姿は少しだけ滑稽こっけいだったが、様になっていた。


「まさか、こんなに早くドラゴンの元にたどり着くとは思いませんでしたよ。スーラと転移結晶の効果はすごいですな、グレア殿」


「それもあるけど、やっぱりボールスの経験と実力も大きいよ。感謝しかない」


「しかし、最初は驚きました。まさか、公爵家の跡取りだったとは」


「そう言うなよ。陰謀に巻き込まれなかったら、今頃はオシャレなグラスでワインを飲めていたんだから」


「違いない」と俺たちワインを飲んで笑い合う。


「明日はいよいよ、ドラゴン討伐。俺たちの計画の第一歩だ」


「よろしいのですか。イブグランド王国の守護者を殺せば、もうあなたは元の地位には戻れませんよ?」


「裏切られた国に、すじを通す奴がどこにいるんだよ。それに後輩とも約束しているんだよ。将来、俺はこの国を変えてやるってさ。一緒にこの腐った王国を変えてやろうぜ」


「魅力的なお話ですな。地上に出ることができたら、旨いワインを用意しておいてください」


「ああ、そしたら樽ごと開けちまおう。だが、まずは、王族の切り札であるドラゴンを叩き潰すぞ。おそらく、あいつらの強権は、そのドラゴンの実力があるからこそできることだ」


 ※


―王都(ソフィー視点)―


「ハァ、ハァ」

 私は荒い息を抑えるようにしながら、すべてを終えた殿下の身体に抱きついた。ピンク色の髪がベッドに散乱していく。お互いに生まれたままの姿で、体温を交換する。この一瞬だけが私からすべてを忘れさせてくれる瞬間。赤ん坊のように、たくましい身体の殿下に抱きついていた。


「大丈夫か?」


「ハイ」

 私たちは何度目かわからないキスをする。長く濃厚な時間が流れた。


「すまなかったな、ソフィー」


「えっ!?」


「大変なことに巻き込んでしまった。グレアの死も、お前の実家のことも……もう、終わりにした方がいいかもしれないな、俺たちの関係も。責任はきちんととるつもりだ。お前が困らないくらいの援助はさせてもらうよ」

 いやだ。いきなり、切り出された言葉に、私は絶望する。ここで終わりってこと? もうあなたしかいないの。本当に一人ぼっちになってしまう。


「どうする?」

 考えがまとまらないうちに、私は彼にうながされて身体に抱きつく。


「捨てないでください。私、あなたに捨てられたら……もう何もないんです。あなたが、私をこういう風にしたのに。やだ、絶対に嫌です」

 すがるような声を出したことで、彼は頭をなでてくれる。


「大丈夫だ。お前の気持ちがよくわかったよ。さっきのは冗談と言うことにしておいてくれ」

 そして、また甘いキスをプレゼントしてくれた。


 ※


「ふっ、優等生を完全に堕とすのも楽しいもんだな。遊び慣れている奴らと違って、どこまでも堕ちていくんだから。ついに、あいつは自分から俺を選んだ。これでもう、ソフィーは俺を拒めない」


―――――――

マーリン(奇術師)

 魔法使い系モンスターの中でも、トップクラスの実力を誇る奇術師。魔法使い系・悪魔系モンスターは魔族とも呼ばれて、モンスターたちの中でも特に知能が高い。かつて、存在していた古の魔王軍幹部たちの子息であることが多い。

 奇術師たちは、特に知能が高く魔力才能にも恵まれているため群れることはなく、基本的に一人で過ごしている。マーリンのように、人間と契約し、国の暗部と結託する事例も多く、かつてはこれを利用されて魔族に人間の国が乗っ取られかけたことも。

 マーリンは、炎・氷属性の攻撃魔力を得意とする。性格は、非常に理知的で周囲の状況を観察し、最善手を取る傾向がある。ただし、自分以外を信用していないため、一時的に手を結んだ相手(ゴブリンなど)は冷酷に切り捨てることもいとわない。ただし、グレアたちとのパーティーには居心地の良さを感じており、自分の性格と矛盾していることに驚きつつも楽しみながら順応している。


(能力)左:現在/右:ポテンシャル

政治:79/91

武力:10/20

統率:70/88

魔力:90/97

知略:94/98

魅力:30

義理:40


(適正)

近接戦:E

騎:E

弓:E

魔:S

内政:A

外交:A

謀略:A


(特殊スキル)

・魔力複数制御

・詠唱短縮

・魔石効果2倍

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