29.暗躍※ヤシャ視点

 「皆、よくやってくれた。王も喜ばれよう」


 鬼討府の襲撃から生還した少数の鬼達に向かって私は言った。


 「ケッ。もう少し戦わせてくれてもよかっただろうに」


 ラセツは不機嫌だ。だが、ヤツに付き合って結界石を奪えなかった場合、計画の全てが瓦解する。


 「勝手に残って死んでいればよかったのに」


 「ラセツは強敵を相手に見事役目を果たした。隙を作れなかった我々とは違ってな」


 ケイキがラセツを貶し、それを庇うガキ。いつもの光景だ。ケイキとガキも他の四聖塔を攻めていたが苦戦していた。


 「さて、これからだが。我々は多くの戦力を失った。だがこれからここを気付かれないよう、人間共の注意を逸らさなくてはならない」


 我々は地上にいた。奪った結界石の力で拠点を創り出したのだ。


 「《刹塵衆》には順番に地上を荒らしてもらう」


 《刹塵衆》。鬼王により選ばれた鬼達。人間たちを倣って番号が振られた精鋭である。私が壱番、ラセツが弐番、ケイキが参番、ガキが肆番となっている。今のところ拾参番までいる。


 「人間など地上にある塵芥にすぎん、我々できちんと掃除しよう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る