28.陰陽師※ミコト視点

 陰陽庁からの使者。カモノと名乗った男は慇懃無礼な態度で鬼討隊について駄目出しをした。


 カラスマさんと僕は大人しく相手の話を聞き続ける。


 「……して、カモノ殿。鬼が陰陽術を使う可能性はあると思いますか?」


 相手の言葉が止まった隙にカラスマさんが質問した。今まで得意げに話していたカモノ殿は鋭い目でこっちを睨む。


 「突然戯言を。なにか根拠があっての話ですか?」


 確実に今までのカモノ殿とは雰囲気が違う。何か知っているな。


 「今回の襲撃は突如として湧いた鬼の大軍。結界内に侵入した鬼。結界石を持ち帰った行動。謎が多過ぎるのです。鬼が陰陽術を使ったでもない限りこのようなこと成せるでしょうか」


 「鬼には鬼術があるでしょう。そちらを疑った方が良いのでは」


 確かに500年前の鬼王の暴虐により、鬼はそれ以前より遥かに多くの能力を得た。だが最盛期であったその時でも結界を無効化したなどの事例は無い。更なる能力発現の可能性もあるがジャック君は自信を持って言い切っていた。


 「ふむ。なるほど。話せはしないがなにやら自信があるようだ」


 カモノ殿は僕を見るとしばらく考え込んで話し出した。


 「ご存知の通り、我々陰陽庁は古くは鬼を使役しておりました。今では禁術とされていますが、鬼と陰陽術は以外に近いものなのです。……そして、その長い歴史の中には陰陽庁を離反した不届き者も残念ながら存在します。今回こちらを攻めた鬼とそれらが関係するかはわかりませんが我ら陰陽庁、全力で援助したく思います」


 どうやらカモノ殿はもとからそういった事を考慮して討鬼府に探りにきたようだ。これから大量の陰陽師をこちらに派遣して対応してくれるらしい。


 話し合いが終わり、総隊長室に戻ってきた。


 「なんとか結界についてはどうにかなりそうだ。陰陽庁があれほど協力的とは」


 カラスマさんは事態の進展に機嫌が良くなっていた。


 「よかったです。討鬼隊のみんなも大分疲弊していたので助かりますね」


 しかしあの陰陽庁が危惧するほどの今回の鬼の行動。どうやら根はとても深そうだ。

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