26.疑問

 襲撃後、隊舎で休んでいた。11番隊の隊員は大きい傷を負った者はいない。よかった。

 今回は鬼に惨敗してしまった。ジャックに変わらなければ大怪我をしていただろう。


 『あの程度のヤツらにやられてるようじゃ、まだまだってことだ。もう全部オレ様に任せた方がいいぜ』


 ジャックは多くの角を喰らい機嫌がいい。大分力を取り戻した様で身体の主導権を奪われかねない。


 「ヒメさんか隊長により強くなる方法を聞こう!」


 部屋を出ようとしたら扉が叩かれる。


 「今、大丈夫かい?」


 ミコト隊長と副隊長達が訪ねてきた。


 「今回は……、危なかったね。こんな事初めてだったとはいえ君を危険に晒してしまった。すまない」


 隊長が真剣な顔で頭を下げる。副隊長達も続いて詫びる。


 「そ、そんな。俺こそ皆の足を引っ張って役に立てなくてすみません」


 「君はとてもよくやってくれている。元々の目的は霊力の強化なんだ。鬼との戦闘が最も効率が良いとはいえあのような状況で戦場に連れて行ったのは僕の判断ミスだ」


 「私達もしっかりと補佐出来ず情けないわ」


 「そんなに謝らないでください。この通り無事だったのだから問題ありません。それよりもより強くなる方法が聞きたいです。次は鬼に負けたくないので!」


 「あの鬼は強かったわ。それがあんなに大量にいるなんて。それも結界内に何故入れたのかしら」


 「上層部も困惑してたね。…ジャック君、心当たりはあるかい?」


 ジャックはたとえ知っていても素直に答えるとは思えない。いままで何度も隊長が鬼について質問したがふざけてばかりだった。


 「なんだ。わかってないのかよ。陰陽術だろ。お前達は陰陽術を使って結界張ってるんだ。陰陽術使えば鬼でも入ってこれるだろ」


 答えるのか!


 「……それは本気で言っているのかい。陰陽術を使う鬼がいる。または鬼に陰陽術をかけた何者かがいる」


 隊長は真剣な顔で考え込んでいる。


 「鬼の体は倒すと消えちまうからな。後からじゃ調べられない。オレ様は角を喰ってるときに感付いたぜ。あれは隠形と結界破りの術だ」


 ジャックは茶化しながらも饒舌に説明していく。まるで頭が良いみたいだ。


 「なぜ君がそんなに陰陽術に詳しいのかも聞きたいが。……それなら鬼が結界石を破壊ではなく持ち去った意図も見えてくるよ。上層部と話をしてくる」


 慌てて隊長は部屋を出て行った。ヤエさんも隊長の後を追って行ってしまった。部屋にはヒメさんが残っている。


 「改めて謝るわ。一番近くにいた私があなたを守れなかった。ごめんなさい」


 深々と頭を下げる。


 「それじゃ今回の失敗を2人で反省しましょう」


 頭を上げたヒメさんはいつものヒメさんだった。


 「あなたはより強くなりたい。わたしもあなたをしっかりと守れるように、もっと強くならねばならない。よし、2人で特訓ね!」


 2人で訓練場に向かった。

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